2008年10月18日土曜日

製造物責任法概論

・製造物とは
製造物とは製造または加工された動産(PL法2条1項)のこと。つまり未加工の農林水産物や鉱物にPL法は適用されない。同様に、不動産やサービスにも適用されない。

・「買主注意せよ」から「売主注意せよ」の時代に
今日のように製品がハイテク化している時代、被害を受けたとしても消費者がメーカーの過失を立証することは困難である。そこで、これまでの責任要件としての過失に換えて「欠陥」概念を導入し、主観的な人の過失行為から客観的に物の欠陥に着目した。PL法はこの欠陥責任が導入された法である。
※欠陥:当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること(PL法2条2項)

・責任主体は製造業者等
PL法でいう製造業者等とは以下を指す。
①製造業者、輸入業者(メーカーだけではない点に注意)
②表示製造業者、表示輸入業者(「表示」とはOEM契約に基づき供給された製品を自社ブランドで売っている場合など)
※OEM契約(Original Equipment Manufacture):発注者が自社ブランドで販売するために、受注先に製品を供給させる契約
③実質製造業者(「実質」とは他のメーカーが製造した食品や医薬品を自社ブランドの名で販売する場合など)

・被害の対象は拡大被害
被害が製品そのものに止まっている場合には適用されない。例えば、パソコンが発火してパソコンが使用不可能になっただけならPL法は適用されないが、発火が原因で手に火傷を負ったり家が全焼した場合はPL法が適用される。PL法のキーワードは「品質」ではなく「安全」。

・対象となる製造物の引渡しにつき、有償・無償を問わない
販売した製造物のみではなく、サンプル商品もPL法の対象となるということ。ただし、盗まれた場合は該当しない。

・免責は困難
引き渡したときにおける科学又は技術に関する知見によっては欠陥があることを認識することができなったことを、製造者等が証明できれば免責される。しかし、ここでいう「科学又は技術に関する知見」とは、当事の世界最高レベルを想定しているといわれているため免責は困難である。

・PL(Product Liability)対策
企業におけるPL対策として、警告ラベルの貼り付けや安全使用のための取扱説明書の作成、更には消費者相談窓口を設置し、事故及び訴訟を未然に防止することが望ましい。また、原材料・部品納入契約やOEM契約における責任分担の明確化も有効な対策である。

・PL法施行後の動き
PL法が制定されて訴訟が増えると言われていたが、実際は予想されていた程の数の訴訟は起きなかった。しかし、一方で自主的な製品回収は増えてきており、「万が一のリスク」は高くなりつつある。今後、製品に不具合が発生した場合、不具合はその製品のみに起こるのか、類似品、同じ工場で作られた物にも含まれるのかチェックすることが望ましい。

3 件のコメント:

  1. 突然の書き込み失礼いたします。
    PL法に関し疑問に思っていたことがわかり大変勉強になりました。
    差支えなければnaruoさんが読まれた書籍のタイトルを教えて頂くことは可能でしょうか。
    私も直接読んで勉強したいと思っております。

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    1. 匿名さん
      コメントありがとうございます。
      ご質問の書籍に関してですが、このエントリーは法務セミナーを受講した際の忘却禄としてまとめたものであって、書籍を読んだわけではありません。
      お役にたてず、申し訳ない。

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  2. naruoさん、ご返信ありがとうございました。
    御礼遅くなり誠に申し訳ありませんでした。
    今後共よろしくお願いいたします。

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