2012年9月8日土曜日

会社法制見直しに関する要綱案について

先日紹介した会社法制の見直しについて、少し時間が出来たので、大和総研のレポートをじっくりと読んでみることにした。

日経225に入るような立派な企業ではない普通の上場会社(監査役会設置会社で社外取締役を設置する意義など見いだせないよ(笑)という会社)を想定した場合、今回の見直しでちょっと対策を考えておかなければならないだろうと自分なりに思った項目をまとめておく。(間違っていたらこっそり指摘してください)


■証券取引所規則改正と監査・監督委員会設置会社制度

今回の改正の目玉となった、「社外取締役の選任義務付け」は、経済界からの強い反発もあり導入は見送られたが、一方で東証から「独立した社外取締役の確保のお願い」という文書が通知された。全ての大会社に社外取締役の設置は求めないものの、上場会社であれば社外取締役を設置しろという強いメッセージだ。だがしかし、そもそも経済団体(=上場会社で構成される団体)からの強い反発があって導入が見送られたという経緯も無視できない。

そこで、その妥協案の産物がこの『監査・監督委員会設置会社』である。

この監査・監督委員会設置会社の大きな特徴は、監査役がなく、その代わりに過半数の社外取締役で構成される監査・監督委員会が設置される点だ。つまり、現在どの上場会社(監査役会設置会社)にも設置されている社外監査役を社外取締役に変更し、取締役として監査・監督委員に任命することで、従来の監査役会設置会社から人員を追加することなく、社外取締役を設置することが可能となるのだ。

若干ポイントとなるのは、現在の多くの監査役会設置会社の監査役会は監査役2名、社外監査役2名の計4名体制(会社法335条では「半数以上の社外監査役」が求められている)である一方、監査・監督委員会は委員の「過半数は社外取締役」でなければならないため、監査・監督委員会設置会社に移行しても(社内の)監査役を1名退任させる必要が出てくる点だ。大半の会社にとって監査役というポジションは、そこそこいいところまで出世したけれど、肝心なところで出世レースに負けてしまったような人が行き着く終着駅であり、法改正に伴って即退職させるという判断はなかなか難しく、適当に「○○顧問」とかにしてお茶を濁すか、監査役1名の退任時期が来るまでは頑なに監査役会設置会社を継続するか、判断を迫られると思う。
もちろん、もう一人社外取締役を呼んできて、社外3名、社内2名にすることは可能だが、社内役員というのは、会社のメンツを保つためにもそれなりの人を選ぶ必要があり結構コストもかかるので、一般的な会社にとっては現実的ではないと思う。


■社外取締役等の要件の見直し

現行法の下では、社外取締役、社外監査役における「社外」の要件は、その会社又はその会社の子会社の出身者でないことを要求している。「要綱案」では、親会社等の関係者は、「社外」と認めない、とはっきりと明言されてしまった。

これは上場会社に限らず、全ての会社に適応されるので、そこそこの規模(大会社)の未上場子会社を保有している会社は頭を悩ませることになる。子会社の社外監査役に親会社出身者以外を選任するわけがないからだ。

この点、非公開会社にしてしまえば、大会社であろうと監査役会は不要となるので(但し会計監査人と監査役は必要)、定款変更をして非公開会社にしてしまうのが早いと思う。

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それにしても、海外機関投資家が社外取締役の設置を要請しているという話を聞く度に疑問に思うのが、彼らは本当にガバナンスの強化など求めているかということだ。彼らが求めているのは投資に対するリターンであり、決して形式的な企業統治ではないはずだ。社外取締役を設置している会社の方が投資リターンは高いというデータでもあるのか。
それから、社外取締役を入れたくらいで企業のガバナンスのレベルが上がるのであれば、企業不祥事など起きないと思うのだが。裏に何かありそうな気がしてならない。

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