2014年12月24日水曜日

インサイダーと適時開示

インサイダーと適時開示に関するセミナーに出席してきた。最新の事例や制度変更(大幅な変更はない)など紹介があり、日経新聞でしか法改正情報を入手しない僕にとっては有益な内容だった。忘却録として、気になった点及び参考データ等をメモに残す。

・「コメント開示充実の要請」と「注意喚起制度の導入」
東証は、いわゆるスクープ報道等、不明確情報への対応として、これまでの「開示注意銘柄制度」に代えて、「コメント開示充実の要請」「注意喚起制度の導入」を行った。
【コメント開示充実の要請】
上場会社に関する所謂「すっぱ抜き」等、不明確情報が発生した場合、東証担当者は上場会社に対して、不明確情報の内容について真偽等の照会を行う。内容次第では、上場会社は真偽を明らかにするコメント開示を要請されることがある。
【注意喚起制度の導入】
投資者の投資判断に重要な影響を与えるおそれがある不明確情報が発生し、東証がその周知を必要と認める場合、投資者に対して、注意喚起を行う。注意喚起は東証ホームページ掲載等の方法により行われる。

・インサイダー取引規制に関するQ&A
金融庁のHPに掲載されている「インサイダー取引規制に関するQ&A」に、約6年ぶりに問2、問3が追加された。追加の背景は、インサイダー取引規制との関連で、上場会社の役職員等が持株保有に過度に慎重になっているとの指摘によるもの。
【問2】
問2では、「社内ルールが過剰な内容になり、結果として自社株式売買を委縮させることがないような配慮」が求められた。そもそも、上場会社はインサイダー取引規程を置くことが金商法上求められているわけではない(但し、会社法上の取締役の善管注意義務には含まれるという議論はある)。社内規程の設置は役職員による「うっかりインサイダー」を防止するためのものであって、意図的なインサイダー取引を防ぐことは不可能。したがって、重要事実を知る可能性のない従業員も含めて、全従業員の自社株売買を一律に禁止又は制限するような過剰な規程は見直しをするべきである。
【問3】
問3では、「会社関係者」が未公表の「重要事実」を知った後に売買等を行ったとしても、当該売買等が「重要事実」を知ったことと無関係に行われたことが明らかであれば、インサイダー取引規制によって抑止を図ろうとする売買等には該当しないと明記された。その具体例として「重要事実が株価上昇要因となることが一般的に明白な時に、当該株式の売付けを重要事実の公表前に行うこと」が挙げられているが、本事例には注意が必要である。例えば業績の上方修正の開示をしても、その上方修正が株価に折りこみ済みの場合、上方修正開示後に株価が下がることは、多々あるからである。したがって、重要事実を知る立場の役職員が自社株式を売買する場合は、個々で判断せず、必ず事前に事務局に相談してもらう体制を整えるべきである。

・役員持株会の問題点
役職員によるインサイダー取引を回避するため、持株会を通じて株式を購入している会社が多いが、特に役員持株会の場合、初回の買付けはインサイダー取引になる可能性が高い(担当者は皆分かっているが思い切って実施している?)。これを回避するには、従業員持株会加入者は役員になったら自動的に役員持株会に移行する、役員になった時点で自動的に一定の金額で加入しなければならない等、自動的な加入が可能となるような社内ルールを設けるべきである。

・適時開示とインサイダー規制
適時開示の時期とインサイダー規制上の重要事実決定時期に差異が生じるケースがある。例えば合併を行う場合、合併の実現に向けて準備に入った段階で、既に重要事実(インサイダー)が発生しているとみなされるが、適時開示を行うのは取締役会決議を経てからとなる。したがって、その間の情報管理が重要となる。

・その他
・インサイダー取引の摘発件数は、会社関係者による件数より情報受領者による件数の方が継続的に上回っている。自社の情報管理体制が適切か、コンプライアンス教育は適切か見直すべきである(自分がインサイダー取引をしなければいいとだけ考え、情報を漏えいすること自体が問題という意識がないケースが多々ある)。
・日本取引所自主規制法人のHPでは、インサイダー取引に関する社内研修用資料の提供や、相談窓口を設けているので、是非活用してもらいたい。

<参考>
いわゆるスクープ報道と適時開示を巡って(大和総研)
「インサイダー取引規制に関するQ&A」の追加について(金融庁)
刊行物・パンフレット(日本取引所自主規制法人)

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