違法カジノ賭博問題で揺れた日本男子バドミトン会だが、下記の朝日新聞の記事によると、先日、男子シングルスでトナミ運輸の佐々木翔がリオデジャネイロオリンピック出場が確定したようだ。
最近、いまいち国際大会では結果の出ていない佐々木翔だが、この出場は素直に喜びたい。既に今期限りでの引退を表明しているので、このリオオリンピックの挑戦が佐々木翔の現役最後となる。最後まで佐々木らしいシングルスプレーを見れることを期待している。
というわけで、今日はトナミ運輸バドミントン部の佐々木翔選手について書いてみたい。
以前にも書いたのだが、佐々木翔は非常に不遇の時代が長かったバドミントン選手である。現在の男子日本バドミントンの強豪校といえば、埼玉栄高校(埼玉)か富岡高校(福島)になるだろうが、佐々木が現役高校生の頃は、圧倒的に関東第一高校(東京)が強かった。その関東第一高校の象徴選手は、この佐々木翔・・・ではなく、その同級生の佐藤翔治だった。
佐藤翔治(現役の頃)
佐々木翔を語る上で、絶対に外すことができない人物が、この佐藤翔治である。佐藤翔治とは、日本のバドミントン界で一時代を築いた天才プレイヤーの一人。彼のプレーを始めて生で見たとき、そのスピードとフットワークの華麗さに驚かされたが、何より「イケメン」であった。つまり、佐藤翔治の勝利には華があったのだ(佐々木はお世辞でもイケメンとは…)。佐藤翔治は周りの期待を裏切ることなく、世代毎にタイトルを取り、全日本総合優勝、オリンピック出場とエリート街道を歩んだ。
一方、佐藤翔治と同年代で同じ年に関東第一高校に入学した佐々木翔は、佐藤翔治とのダブルス以外は常に準優勝止まり(佐藤が優勝するため)。実力はあるが、佐藤翔治にはどうしても勝てないという位置付けの選手だった。きっと、佐藤と同じ世代に生まれたことを悔やんだのではないだろうか。
しかし、そんな佐々木翔に転機が訪れる。
2007年末の全日本総合バドミントン選手権男子シングルス決勝で、遂に、佐々木翔は永年のライバル佐藤翔治の壁を超えるのだ。
おそらく、田児賢一や桃田賢斗の方が技術的にはレベルが高いのだろうが、この一戦が、日本バドミントン史上、ベストバウトだと僕は思っている。
なお、この後、佐藤翔治はシングルスプレイヤーからダブルスプレイヤーへと転向し、NTT東日本の川前直樹と組んだダブルスでロンドンオリンピックに出場するのだから、やはり天才なのだろう。
さて、話を戻すと、佐々木翔は2007年に遂に佐藤翔治を倒して日本の頂点に立った。所属も北都銀行から舛田圭太等を輩出したバドミントン実業団の名門、トナミ運輸に移籍。これでやっと佐々木の時代が来たのかというと、そうではなかった。
そう、今回違法カジノ問題で有名になった「田児賢一」が現れたのである。
田児は翌2008年の全日本総合から6連覇を果たす。つまり、2007年以降、新たな若いライバルが佐々木に現れたのだ。佐々木にとっては、再び準優勝止まりの時代が始まった。
しかし、ここで終わった佐々木翔ではなかった。
2014年末の全日本総合選手権、決勝戦で桃田賢斗を下し、再び日本の頂点に立ったのだ(田児賢一は棄権)。この時、佐々木は32歳、既にスポーツ選手としての限界はギリギリだった。それを象徴していると思ったのが、優勝後のインタビューだ。
(これから日本のバドミントンを引っぱって行く立場ではないか、という質問に対して)
「みんなについて行けるように頑張っていきたいと思います」
「いや、そんな(日本のバドミントンを引っ張っていくような)感じではないですね」
全日本総合で優勝したにも関わらず、非常に謙虚なコメントだった。もう年齢的にしんどいと悟っていたのだろうか。ちなみに前述の佐藤翔治は2014年時で既に現役を引退して、ナショナルチームのコーチに就任している。
翌2015年末の全日本総合、佐々木翔は決勝まで勝ち進むも勢いに乗る桃田賢斗に大敗。準優勝となった。優勝はできなかったものの、日本の男子シングルスランキングは堂々の2位であり、リオオリンピック出場の可能性は残されている状態で、2016年、オリンピックレースはスタートした。3月には、今期限りで引退を表明、「リオリンピックに出場できなければそれまで」とのコメントも出していた。
そこに来て、あの違法カジノ問題が発生した。
佐々木翔は日本ランキング1位の桃田賢斗が消えたことで、オリンピック候補者に急遽浮上したのだ。そしてオリンピック出場内定。本人の内心は図るべくもないが、僕は全力で佐々木を応援したいと思う。
泥臭いプレーと強靭な肉体から繰り出される強力なスマッシュ、蓄積された豊富な経験が、きっと佐々木が納得するような結果に結びつくと信じている。
なお、リオオリンピックでは、セコンドに現在ナショナルチームのコーチである佐藤翔治が座れば、これ以上の演出はないのだが、きっと舛田圭太が座るのだろう。
そして何よりも、不遇の時代を乗り越えてきた佐々木翔が、最後、悔いの残らない形でバドミントン競技人生を終えることを願って止まない。
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