私も経験したから分かるのだが、就職活動というのは、人間関係を実に微妙にさせるイベントである。スタートした当初は、お互いに情報交換をしたり、面接での珍事例とか面白おかしく話せる部分もあるのだが、同じ大学なのに、面接をあっさり通過する人と全然通過しない人が出て来る頃から、人間関係の空気が微妙になってくる。そして、コミュニケーション能力が比較的高い学生が内定を取り始め、一方でどこの会社の内定もない、仲間内で自分だけ内定が1社もない、という状況になってくると、とても焦る。更に内定先(会社名)も問題で、いわゆる有名企業なのか、東証一部に上場しているか、そういった部分も人間関係に容赦なく影を落としてくる。個人的な感覚ではあるが、ゼミとかサークルとか表面的な付合いしかしていなかった友人とは、確実に何等かの亀裂が生じた。僕は就職活動を通じて、やはり昔からの損得勘定の一切ない友人というのが、いかに大切なのかということを思い知ったものだ。
さて、この小説に出てくる主人公たち(皆同じ大学)も例外ではなく、最初は非常に仲が良く、頻繁に会合を開いて就活の情報交換をするのだが、仲間内の一人に内定が出た辺りから空気が変わり、そして、最後、予想だにしない返しがある。ここが一番のキモなので詳しくは書けないが、小説を読んでいて何となく辻褄が合わない部分があり、そこにあまりとらわれずに読み進めていくと、そういう前提があったのか、と驚嘆させられた。そして、「何者」の意味。あらすじはこんなところかな。
この小説は直木賞を受賞したらしいが、最後まで読んで、納得した。確かに面白い小説だった。
この小説を読んだからといって就職活動に役立つことはないだろうし、実際、主人公は物語の最後まで内定が取れていない。また、理系で研究室の推薦などであっさり就職活動を終えた人が読んでもピンと来ないだろう。就職活動を終えた普通の文系学生が読むと、一番面白いのではないかと思う。
それにしても、今の学生って、こんなにも実名でTwitterをやってコミュニケーションしているのか…。知らなかった。
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