2016年5月2日月曜日

大前流心理経済学 貯めるな使え!

大前研一先生が書いた古い本「大前流心理経済学 貯めるな使え!」を引っ張り出してきて読んでみたので、その感想。

かなり分厚い本だったが、切れのいい大前節でサクサク読むことができた。前半では当時の日本の危機的な状況を、大前研一氏の知る「世界」と比べながら紹介しており、なかなか興味深い記載が多くあった。大前氏曰く「日本国の財政状況は夕張市よりも遥かに深刻」なのだそうだ。しかし、それでも何とか運営できているわけで、破たんするとしても、それはまだまだ先だと個人的には感じている。



僕がもう一つ良く分からなかったのが、日本人の保有資産1500兆円をファンドで運用しようという発想だ。優秀なファンドマネージャーを雇って、年率10%~15%で回すと書かれてあったが、ファンドの過去の成績とその後の運用成績は関連性がないことや、LTCMの伝説(ノーベル経済学賞受賞者や投資界のスーパースターで構成された最強のヘッジファンドが破綻)を考えると、あまり賢明な考えではないように思えた。少し前のサブプライムローン問題では、あのシティバンクや、あのメリルリンチが兆規模の損を出したし、何より名門リーマン・ブラザーズ証券は死んでしまった。優秀なファンドマネージャーに運用を任せても、どうしようもない外部要因で1500兆円を吹っ飛ばす可能性もあるということだ。

本書後半の内容は、過去の著書と被る部分も多かったし、大前氏の政策提案だったので、適当に流し読みして終えてしまった。また、「では、個人としてこれからどうすればいいのか」ということに関してはあまり書かれておらず「ここから先は、私のビジネススクールで」といった感じがした。

なお、大前研一氏の経歴を見る限り、海外の大学や経営大学院では教鞭を取った経験はあるようだが、日本の大学ではどこでも教えていないようだ(今では自前の大学院や大学を運営しているから他大学で教えないとは思うが)。大学生の間に大前氏の講義を受ければ、人生の変わる日本の学生も相当出てくると思うので、勿体ない話である。

余談であるが、この本にはDVDがおまけで附属していた。最初はお得だと思ったが、このDVD、やはり本の「おまけ」ということだけあって、内容が薄かった。大前研一氏が主催する経営大学院、ビジネス・ブレークスルーの授業内容のダイジェスト版といった内容だったが、あの大前さんの経営大学院はこの程度のことをやっているのかと、少しがっかりしてしまった。宣伝としては逆効果ではなかろうか。唯一、大前さんが講師をしている映像だけ全部見たが、他は途中で飛ばしてしまった。

※参考サイト
LTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)

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