2019年9月23日月曜日

グループ会社外への転籍手続きに関する留意点

久しぶりに法務っぽいネタを調べたので、メモしておきます。(企業法務というより人事・労務に近いですが、無視して下さい)

テーマは出向と転籍の違いですが、この転籍は所謂「企業グループ」内の会社で転籍するのではなく、資本関係の無いグループ外の会社に社員を転籍させるケースを想定しています。

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■グループ会社外への転籍手続きに関する留意点


1.出向との違いは退職を伴う点
転籍と出向の違いは、退職を伴うかどうかであり、転籍は正式には「転籍出向」と呼ぶ。出向元との労働契約を解消して異動先と新たに労働契約を結びなおすため、元の会社を退職することとなる。


2.転籍では原則、退職金を支払う
グループ会社内の転籍では退職金債務が転籍先の会社に引き継がれるケースがほとんどだが、グループ会社外への転籍では会社を一旦退職することになるため、原則として退職金を支払う。ただし、転籍先に退職金が引き継がれ、定年退職のときに転籍先の会社から受け取るケースもある。転籍先の会社と相談を行う。


3.転籍での退職は会社都合となる
転籍は会社の人事辞令によって行うものであるため、グループ会社外への転籍は「会社都合退職」となる。


4.従業員は転籍を拒否することが可能
転籍が行われると社員と出向元企業との労働契約は終了することとなる。そのため、仮に就業規則や雇用契約書に「会社は転籍を命じることができる」等と定められていたとしても、会社は従業員の同意がなければ転籍させることはできない。よって、従業員は転籍に同意したくない場合、拒否することが可能。なお、会社は転籍を拒否したことを理由に、従業員に不利益を与えることができない。


5.転籍の同意は書面で確認する
転籍を行う場合、トラブルを避けるためにも「会社」「従業員」「転籍先」の三者間において、「転籍同意書」等で意思表示の確認を取る。退職金の支払い時期や金額、転籍先での労働条件や福利厚生について書面で内容を確認する。


6.不利益変更への対応
通常、転籍時の不利益変更に関しては、該当する従業員に対して一定の配慮が必要となる。しかし、グループ会社外への転籍は、元の会社を退職して新たな会社に採用という流れに必ずなるため、不利益変更になるか否かにかかわらず、転籍の前提として本人の同意が必ず必要になる。よって、不利益変更を特に取り上げて懸念する必要はない。


7.年収減少分の補填について
グループ会社外に転籍する場合、年収水準が低下するケースが出てくる。こうした場合、従業員と転籍の合意をするために、一定の期間(3年間など)の移行期間を設定して、差額を転籍元が負担するのが通例である。但し、年収補填に関しては個別協議であって必要条件ではない点に留意が必要。


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