内容を簡単に説明すると、瀕死の某日本電機メーカーが起死回生をかけた新技術を開発。しかし、その技術は先に中国の電機メーカーが開発済みで、その実態を調査したところ、中国側の技術開発責任者はその某日本電機メーカーでかつて開発職に携わっていた日本人だった…。
最近よくある「日本の技術流出」がテーマで、実際、日本の技術者が高額の報酬で中国をはじめとする新興国に割と良い待遇でヘッドハントされ、技術指導しているという話はよく耳にする。本書の技術者はヘッドハントされたわけではなく、部門の閉鎖で会社から追い出される形で中国へ渡ったという経緯があり、その点が主人公の葛藤を招くのだが、それに加えて、友情とか家庭問題とかマスコミとか、やや強引に絡めながら物語は進み、クライマックスへ。
終盤、さてこれから泥沼の訴訟合戦が始まるのかと思いきや、どんでん返しが起こり、まるで少年漫画でも読んでいるかのごとくハッピーエンドで小説は幕を閉じた。
はっきり言って、最後は、リアリティがないという意味であり得ないと思った。
1000歩譲って、記者会見の席で元日本電機メーカー技術者が技術の経緯を暴露してしまうのは「有り」だとしても、その後、日本と中国のメーカー同士で業務提携の話が始まるのは無理が有りすぎると思った。現実なら裏切った当該技術者は中国で粛清されてお終いだろう。
・・・などと思いながら、同書の感想を検索してみたら、ほぼ同じような感想を書いてあるサイトがあって、少し安心した。本書は「日本の技術流出」をテーマにした経済小説というよりかは、ただのエンターテイメント小説として読んだ方がいいと思われる。
全く関係のない余談だが、小学生の頃、量販店で1ダース100円前後の鉛筆を発見し、これは安いと思って購入した。そして家の鉛筆削りで削ったところ、衝撃の事実が。先端部分が黒い「芯」の部分ではなく、周りの木製部分が出てきて、鉛筆として全く使い物にならないのだ。要は、芯が中心部分に入っていない欠陥商品だった。箱を見たところ「MADE IN CHINA」と書いてあり、小学生ながら中国製品はヤバいと感じたものだが、あの日から約20年、まさか日本の電機メーカーが中国に足元をすくわれる時代が来るとは想像できなかった。
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