彼と出会ったのは大学2年生の後半。本格的に始まった「ゼミ」が一緒になったのがきっかけだ。背も高く、男前で、性格が優しくて、男女問わず誰からも好かれる好青年だった。彼とはゼミが始まってすぐに仲良くなり、大学近くで下宿していることもあって、よく泊まらせてもらったり、一緒に飲みに行ったり、とにかくいい友人関係が続いた。
ある日、彼の家に遊びに行った際、英会話教材が山積みにされているのが見えた。
「英語勉強しているの?」
「いや、今は全然勉強していないんだけどね。。。 欲しかったらあげるよ」
しかし、かなりの量のテキストとCDだったので、詳しく聞いてみたら、なんと訪問販売で購入したのだそうだ。
いくらかかったのか聞いてみたら、100万円!
100万円と言えば社会人になった今でも高額な金額だが、学生にとっては一年間バイトしても稼げないような額だ。分割払いで契約したのだという。
他に部屋には変な本(宗教関係?)もあって、これは何か聞いたらやはり訪問販売で買わされたのだとか。もう敢えて、値段は聞かなかった。
■ □ ■ □ ■
それから半年程経ったある日の授業。まだ就職活動も本格化していない時期にスーツに身を包む彼と出会った。
話を聞くと、バイトで着なければならないのだと言う。
そのバイトは学習教材の訪問販売で、斡旋先は100万円の教材を購入させられた会社・・・。とことん付け入られているような気がして不憫に思った僕は、何人かゼミの友人と組んで、無理矢理バイトを辞めさせて、更に、親にも事情を話させて、その教材会社と縁を切るよう説得した。
そのアルバイトトラブルが解決した彼は、次は塾講師のアルバイトを始めて、毎日が楽しいと話していた。当時、僕も同じ塾講師のバイトをしている者として嬉しかった。更に、めでたいことに年下の彼女もできたということで、少々羨ましさを感じつつも、彼を祝福した。
それから、数ヵ月後、再び彼の部屋に遊びに行ったとき、今度は消費者金融の案内状みたいなものが置いてあった。
一応、これは何かと聞いたら、毎月の交際費が高くて、バイト代だけではまかなえず、借金をしようと考えている。そのせいで、リクルート用のスーツも買えないと嘆いていた。
交際費とは、もちろん「彼女」との交際費である。
話を聞くと、彼女はバイト先の塾の生徒から紹介してもらった「高校生」で、とにかくお金がかかるのだ、と。食事代は当然ながら、交通費(タクシー)も彼持ちで、更に「親が携帯を持つのを許してくれない」ということで、彼が彼女の携帯を買って、その携帯代も全て彼持ちという強烈な搾取のされ方だった。
それは、彼女と付き合い方の話をした方がいいのではないかと言ったら、実は彼女は何人も彼氏がいるのだと。そして、他の彼氏に負けないように、プレゼントやら何やらをしているのだと言われた。
彼氏の中には社会人もいて、キャッシュカードを彼女に渡している猛者までいると言っていた。
確かに、携帯の写真で見た彼女はアイドル級のとてつもない美人だったが、普通、そこまでするか・・・。というか、複数の彼氏の存在を宣言した上で、カネの貢ぐ額を競争させる彼女は、正に「悪女」だと思った。
数日後、再び僕はゼミの友人と組んで、無理矢理彼女と別れさせた。
彼女専用の携帯も解約させて(月に3万円も携帯代がかかっていた)、変なキャッシュカードも解約させた(まだ使っていなかった)。
その後、彼は大手金融機関に内定して、今は元気に働いている・・・のかと思ったら、既に退職して、今は地元の田舎でのんびり働いているらしい。来月には年上の女性と結婚するのだそうだ。
まぁ、勝手にバイト辞めさしたり、彼女と別れさせたり、やりすぎ感は否めないが・・・。
彼に幸あれ。
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