創業時、週110時間、平日18時間働いていたという伝説である。
この伝説を詳しく知りたいと思い、古い本だったが購入して読んでみたのが「渋谷ではたらく社長の告白」だ。
急成長するベンチャー企業の中身がどういうものなのか、サイバーエージェントの社長視点で淡々と描かれてあり、分かりやすく、そして読みやすい。
創業期から上場、ネットバブルの崩壊、そして芸能人(奥菜恵)との結婚…。(その後、結婚はダメになってしまったようだが)一般人が10年、20年かけて達成するような偉業を、この藤田社長は1年でやってのけてしまう、そんな勢いを感じた。また、株式上場に絡んで村上ファンド(当時)の村上世彰氏、楽天の三木谷浩史氏、GMOの熊谷正寿氏、そしてホリエモンやいった新興企業の有名人が登場する。2006年のライブドアショックの頃に名を馳せていた連中は、随分前から交流があったということが、本書から読み取れた。
本書で、サイバーエージェントは「将来21世紀を代表する企業を作ること」が目標と繰り返し強調されているが、理念というか「何のために」「何をもって」といった具体性は見えず、とにかく売上と利益を追求する姿勢が強かった。経営理念など、成功した企業が後から考えた副産物なのかもしれないが、永続的に社会に必要とされる企業になるには、そこが大事なのではないだろうか。
さて、最も意外だったのが、藤田社長が技術者出身ではなかったということだ(大学も青山学院大学の経営学部卒)。元ライブドア社長の堀江貴文氏のようにバリバリのネットオタクだとばかり思っていたが、文系人間で営業畑の人だったとは思わなかった。楽天の三木谷浩史社長も一橋大学(理系学部が存在しない)卒の銀行出身だし、IT企業を経営する人は技術畑の人間という先入観をなくさないといけないな。
さて、表題の「週110時間、平日18時間働く」とはどれくらい働くことなのだろうか。藤田社長は平日は毎日終電まで働き、土日祝日連休全部働いた結果、週110時間、平日18時間働いたことになったそうだ。この働き方は誰かと似ているなと思ったら、日本電産の永守重信社長だ。永守イズムを彷彿とさせるようなハードワーカーで、そのタフさには脱帽だ。「ワークライフ・バランス」とか「残業0」とか「何とか休暇」とか、ゆとりある働き方も大事だが、上を目指すビジネスマンであるならば、一度は経験しなければならない泥臭い働き方を知るには、本書は絶好の教材だろう。
僕は現在平日の睡眠時間は約5時間で、それでも会社ではへろへろ、休日はバタンキュウ。とてもじゃないがベンチャー企業では(少なくとも藤田社長の経営する会社では)やっていけないだろうなぁ。
とはいえ、藤田社長の経営するサイバーエージェントが面白い会社であることには違いない。時間があれば、藤田晋社長の他の著書も読んでみたい。
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