2020年5月24日日曜日

同一労働同一賃金への対応

今更ながら同一労働同一賃金について調べてみた。これは、正社員と非正社員での「不合理な待遇差」を禁じる改正法であり、大企業は2020年4月から、中小企業は2021年4月から適用される、つまり一部の企業ではすでに適用が始まっている。
よって、今更腰を上げている大企業の担当者は失格なのだが、とりあえず、覚えておきたい内容を、メモとしてここに残しておくこととする。

結論から言うと、企業として準備すべきことは以下の2点である。

  1. 正社員と非正社員(定年後の再雇用者や地域限定職社員含む)の待遇差を整理した表の作成
  2. その待遇差の「説明義務」の準備

以下、同一労働同一賃金の法改正のポイントを簡単に紹介する。


同一労働同一賃金の主な改正内容
  • 正社員と非正社員の不合理な待遇差を禁じる「均衡待遇」と「均等待遇」の規定が整備されたこと。
  • 雇用形態による待遇差の内容と理由について、「説明義務」が創設されたこと。

法改正の目的
同一労働同一賃金という言葉から、「非正社員が正社員と同一の労働をしているのであれば、正社員と同一の賃金を払わせること」が目的だと思えるが、そうではなく、後述の「均衡待遇」と「均等待遇」を強化することで、不合理な待遇差を無くすことを目的としている。つまり、賃金だけではなく、休暇、福利厚生施設、研修の機会等の格差も課題となる。なお、対象が正社員と非正社員の差の是正であるため、正社員同士の手当の差や、有期契約社員同士の差には対応不要。

「均衡待遇」とは
正社員と非正社員の待遇差について①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲、③その他の事情、を考慮して不合理な待遇差を禁止する制度。一切の待遇差が禁止されているわけではなく、それぞれの要素でバランスが取れているか否かが問題となる。

「均等待遇」とは
①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲、が正社員と非正社員で同一の場合、差別的取り扱いを禁止する制度。ただし、①②は雇用期間全体で判断するため、実務では「均衡待遇」程の重要性はない。

「説明義務」とは
短時間・有期雇用労働法では、待遇差の説明義務が新設され、企業は非正社員から待遇差の説明を求められれば、待遇差の説明を行う義務を負うこととなった。これに伴い、労基署は相談者が来た場合「短時間・有期労働法14条2項に基づいて企業から説明を受けてほしい」と最初に指導を行うようになっている。これは、会社として考えていることを説明すれば義務は果たされるが、今回の改正法施行に伴い、最も企業が注意しなければならないのが、この説明義務に違反すること。説明義務を果たさない場合、労働行政に指導を受けることや、企業名を公表される恐れがある。

非正社員の雇用上の留意点
正社員と非正社員の職務内容の違いを規程で明確に区分して、待遇差の「説明義務」の準備をしておくことが必要。非正社員の労働契約書や就業規則に職務内容が無限定となっていたり、出向や転籍に関する規定があれば、見直しを検討する。

定年社員の再雇用契約の留意点
定年に達した社員を再雇用する際、賃金は減額する会社が多いが、それが不合理な待遇差だとして揉めるケースがある。この定年再雇用に関しては最高裁の判例があり(長澤運輸事件:最高裁平成30年6月1日)、判決において、定年後の嘱託再雇用は長期間働くことが予定されておらず、老齢年金の支給等も見込まれ、正社員と賃金体系は異なるため、定年前後で仕事の内容が変わらなくても、給与や手当の一部(家族手当、住宅手当など)、賞与を嘱託社員に支給しないのは「不合理ではない」としている。ただし、皆勤者に支払われる精勤手当を嘱託社員に支給しないのは「不合理」とされていることから、皆勤手当のような手当が就業規則にある場合は契約書のひな型の見直しが必要。

2020年5月20日水曜日

2020年7月以降の雇用調整助成金

要注意:本記事執筆時点から、雇用調整助成金の期限は何度も延長が行われています。厚生労働省のHPに掲載されている最新情報をチェックして対応してください。


現在(2020年5月中旬)、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、企業が休業した場合の雇用調整助成金の「特例措置」が設けられている。この特例措置は通常時の雇用調整助成金と比較して、各種要件が大幅に緩和されており、また助成される金額も増えていることから、飲食業等、コロナ影響を受けた経営者の中には申請手続きを行った人もいるだろう。

ただ、現在私の業務に関連するビジネスでは、このコロナの影響により、特例措置の期日とされている2020年6月末以降も、休業をしなければならない可能性が、おぼろげながら見えてきた。

後述の通り、本記事執筆時点(2020年5月中旬)では、特例措置は2020年6月末までと区切られており、それ以降に「一時帰休」等によって雇用調整助成金を申請する場合は、従来の条件(通常時)で申請を行わなければならない。

通常版の雇用調整助成金で申請する場合の留意点について、早急に調べてみたので、7月以降が気になっている方は参考にしてみてもらいたい。前提条件として、休業のみ行い、教育訓練は行わないものとしている。

ただ、参考にしてほしいと書きつつ、私は弁護士や社会保険労務士といった専門家ではないので、当然ながら記事に内容には一切責任が持てないことは最初に書いておきたい。また、本助成金の手続き等は目まぐるしく変わるので、実際に申請を検討する場合は、最新の情報を厚生労働省のHPで確認することを強くお勧めする。


■雇用調整助成金のポイント(特例措置ではなく通常時)


申請単位
助成金支給は「雇用保険の適用事業所」が単位とされ、「本社」が基準ではないことに注意。例えば、複数の都道府県でホテルを経営しており、各ホテルで雇用保険の適用事業所となっている場合、休業を行うホテルの助成金の対象は、そのホテルで雇用保険被保険者となっている労働者であり、その申請は、そのホテルが雇用保険料を納めているハローワーク又は都道府県の労働局へ行う。

主な支給の要件
支給要件はいくつかあるものの、主な要件は以下の3つだ。これらの要件は、すべて例外なく満たしていないと一切認められないので、どれかに引っかかっていることが分かれば助成金は諦めた方が良いだろう。

【生産量要件】
売上高または生産量などの事業活動を示す指標の最近3か月間の月平均値が前年同期に比べ10%以上減少していること

【雇用量要件】
雇用保険被保険者数および受け入れている派遣労働者の最近3か月間の月平均値が、前年同期と比べ、大企業の場合は5%を超えてかつ6人以上(中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上)増加していないこと

【休業等規模要件】
判定基礎期間における対象労働者に係る休業の実施日の延日数が、対象労働者に係る所定労働延日数の1/15(中小企業の場合は1/20)以上となるものであること

※休業実施日の計算は、休業した労働者が1名でもいれば「1日」とカウントするのではなく、雇用保険適用事業所における雇用保険被保険者の所定労働日数の合計日数で算出することに注意。仮に1,000名の労働者が働く雇用保険適用事業所(大企業)で、休業する月の所定労働日数が20日の場合
 ・1,000名×20日×1/15=1,333日(小数点以下切り捨て)
仮に特定の部署のみ1か月間休業させるつもりであれば、
 ・1,333÷20日=66.65
すなわち、67名以上を休業対象としなければならない。

支給限度日数
1年間で100日分、3年で150日分 ※支給日数の計算方法は、「休業規模等要件」における考え方と同じ。

判定期間
1年の期間内(任意に設定可能)に実施した雇用調整(休業)について、1か月単位で判定。

金額上限
休業手当に助成率1/2(中小企業は2/31)を乗じた額。上限は1人1日あたり8,330円。但し、休業期間中に「所定外労働等」があった場合は、休業期間の算定に所定外労働等の時間は「残業相殺」として控除。

■申請手続き


雇用調整助成金


計画届の事前提出
「休業等実施計画届」の「事前」に届出が必要。事前に計画届の提出のなかった休業等については、本助成金の支給対象とならない。

計画届の提出期日
提出の期日は休業を開始する日の前日まで。但し、初回届出の場合は、休業初日の2週間前までを目途に提出。

支給申請の期日
申請期日は、「支給対象期間」の末日の翌日から2か月以内(例:支給対象期間4/16~5/15の場合、支給申請期限は5/16~7/15)。締切日を1日でも過ぎると、支給申請書は受け付けられない。

提出書類
※書式は簡素化されつつあるので、最新のガイドブックで確認して下さい。

提出先
雇用保険料を納めているハローワーク又は都道府県労働局

 

2020年2月13日木曜日

2020年の為替(ドル円)の見通し

今日は為替の勉強会(セミナー)に参加したので、その時のメモをまとめておく。

テーマは2020年の為替相場見通しだったが、見通しよりグローバル経済の現況に関する説明がほとんどだった。内容を一言で言い表すならば、「2020年も世界景気は総じて厳しい一年になりそうなので、為替(ドル円相場)は年末にかけて徐々に円高に進むだろう」となる。

<5つの金融市場のテーマ>

1.米中問題
2020年1月15日に米中「フェーズ1」の合意がなされた。これは包括的な貿易協定の第一段階であるが、合意の内容の内、サービスの輸入(金融サービス他)等、中国側で履行が容易でない分野もあり、今後の展開には注目が必要。また、これをもって米中対立問題は一旦小休止したものの、終結したわけではなく対立は続いており、米中関係は引き続き不安定であると言える。なお、フェーズ1合意の中に「協議による二国間の紛争解決の枠組み」が含まれたため、今後はトランプ大統領のツイッター1つで関税が変わるようなリスクは低くなっただろう。

2.米国大統領選挙
2020年最大の注目イベントであり金融市場に与えるインパクトも大きいと予想するが、11月3日の大統領選挙の結果は現時点では見えない。目先としては民主党候補が誰になるかが注目点であり、急進左派であるサンダース氏やウォーレン氏が台頭すれば、相場はリスクオフ(円高)で反応する可能性がある。

3.中国の景気動向
中国の景況感は米中貿易摩擦の激化緩和の期待から、2019年末から持ち直しの兆しが見られたが、新型コロナウイルスの感染拡大により悪化することが見込まれている。但し、コロナウイルスによる影響は現時点では未確定であらゆる指標には盛り込まれていない(盛り込むことができない)。中国景気が世界全体の需要に及ぼす影響は大きく、注意が必要。

4.五輪後の日本経済
東京五輪は日本経済の成長率を一定程度押し上げる見込みだが、新型コロナウイルスの影響が長引けば経済効果も不透明感が増してくる。消費増税に関しては、負の所得効果がキャッシュレス優遇の無くなる2020年7月から出てくると見られており、消費水準の回復は遅れるだろう。こうした中でも日銀の追加緩和余地は乏しく金融緩和策は期待ができない。

5.BREXIT(英国)
ひとまず2020年1月31日に英国はEUを正式に離脱。今後はFTA(自由貿易協定)等の交渉に注目。

<ドル円相場の見通し>

2020年:後半にかけて世界的な景気鈍化を予想。徐々に円高圧力が高まるだろう。2020年末には1米ドル=108円と予想。
2021年:米国景気鈍化がより鮮明となり、FRBが利下げを実施。これにより円高が加速。2021年末には1米ドル=103円と予想。

但し、現時点では、新型コロナウイルスによる影響は織り込まれておらず、中国経済が悪化すれば世界経済も低迷し、上記予想より円高が進むと予想される。

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2020年2月6日木曜日

純粋持株会社における子会社からの配当政策

3月末決算の上場会社にとって、そろそろ考え始めなければならないのが、剰余金の配当である。すでに決算短信等で配当予想は開示しているので、基本的にはそれに沿って配当すれば良いのであるが、当初の予想より業績が悪くなりそう、もっと言うと赤字転落しそうな場合は色々と考えなければならない。

中でも面倒なのが子会社からの配当で、いつ、いくら、どうやって取るのか、純粋持株会社を例に考えてみた。


<純粋持株会社は上場企業と想定>

純粋持株会社は自社では稼ぐ力がないので、株主に配当を行うか否に関わらず、最低でも自社の販管費等を賄うために、子会社から配当を吸い上げる必要が生じる。

また、純粋持株会社(何とかホールディングス)は証券取引所に株式上場している会社が多く、その多くは3月決算会社であるので、 3月末決算の上場会社と想定する。

<検討事項> 
  1. そもそも今年度、持株会社の株主に配当を行うのかどうか
  2. 持株会社内に利益剰余金がない場合、その他資本剰余金から配当するのかどうか
  3. 利益剰余金による配当を行う場合、子会社からいくら配当を取るのか

最低でも上記3点くらいは配当を行う前に検討しなければならない。また、前述の通り、株主には配当しなかったとしても、最低でも自社の販管費を賄うため、子会社からその分の配当を吸い上げる必要はある。

余談だが、某外資系のアナリストが「日本は配当の有無と株価感応度が異常に高い」と言っていたので、減配したり無配にするならば、それ相応に市場から反応を受けることを覚悟しておきたい。


<子会社から公平に配当を取るために>

持株会社と事業会社の関係性を考える上で、「企業グループの内部留保はすべて持株会社で集約すべきである」、という考え方もある。そうすることによって、グループ経営のコントロールタワーである持株会社がより有効的に会社資源を活用することができる(投資ができる)という考え方だ。その場合は、子会社の決算時の利益はすべて親会社に配当することになる。

しかし、実際に持株会社がそれほど強い権限を持っていないケースもある。例えば、元は一事業部門だった組織がスピンオフされた上で、「子会社として独立させたのだから、自立してやっていけ」と、持株会社から突き放されている場合などだ。親会社が自立してやっていけというなら、稼いだ金の投資も自分らで決めさろ、と反発される可能性は大いにある。従って、子会社からの当期利益はすべて配当として取れないケースも存在しうる。

「子会社から一律で〇割の配当を取る」等、特に法律で決まっている指標はないので、指標は任意となるが、上記のような事情にも鑑み、子会社間で納得感がある明確な指標は必要。BSの剰余金だけ見て一律に決める考え方も無くはないが、その年の見込(又は前年実績)の利益から一律〇%としたり、土地を売却した等の特別利益は全て吸い上げる等のほうが無難かと思われる。


<過去に利益剰余金のマイナスが発生していた会社の留意点>

過去、赤字が累積したことで「その他利益剰余金」がマイナスになった結果、「その他資本剰余金」から振替を行う「損失処理」を行った子会社の配当に関しては、少し考慮が必要である。損失処理を行った事業年度以降に積み上がった利益剰余金は、BS上は利益剰余金だが、果たしてこれを配当することが、「利益からの配当」と考えてよいのか、という視点である。考え方の一つとして、「過去に利益剰余金の損失処理で振り替えた額を上回るまで利益剰余金が積み上がるまでは、その子会社から配当は取らない」ことも、運営としてはあり得るだろう。


<中間持株会社がある場合のスケジュール調整>

利益剰余金の無い中間持株会社がある場合、スケジュール調整に少し工夫が必要となる。持株会社(親会社)が3月末決算会社である場合、当然ながら3月末までに子会社からの配当が必要となる。一方で、配当は最終事業年度にかかる決算で判定するため、中間持株会社には十分な剰余金がないケースが多い。

こういったケースにおいて、会社法では臨時計算書類を作成する(臨時決算を行う)ことで、最終事業年度末日以降の期間損益を分配可能額に算入することが認められている。従って、中間持株会社は前月(今回のケースでは2月末)までに子会社から配当を受けとり、その配当を受けた後に臨時決算を行って臨時計算書類を作成、その時点での「期中の利益」として「分配可能額」を確定させる作業が必要となる。

※ 分配可能額の計算は結構複雑なので、経理部門に任せるのがベター。目安としては以下の式で簡易に算出することは可能。

▪️分配可能額(目安)=その他資本剰余金+その他資本剰余金−自己株式(簿価)

剰余金の配当には株主総会の普通決議が必要なので、子会社は臨時株主総会の準備が必要となる。 配当スケジュール例(案)は以下の通り。

<スケジュール例> 中間持株会社が3月末に配当を行いたい場合








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2020年2月4日火曜日

東証再編と時価総額100億円未満の東証一部企業

少し古い話題になるが、東証の再編についてレポートを読んだので、簡単な感想を書いておきたい。(資料は文末をご参照)

なぜ「東証」市場再編なのか?


東証再編とは、簡単に言うと現在の東京証券取引所における市場第一部、第二部、ジャスダック、マザーズを「新しい市場区分」として「プレミアム市場」、「スタンダード市場」、「グロース市場」の3市場へ再編するというもの。

この市場のうち、最上位とされる「プレミアム市場」の上場基準については、以前は時価総額250億円以上とされていたが、2019年12月25日に示された「東証再編に関する報告書案」では、これが100億円になると公表された。

ここでドキドキしているのは、現在東証一部に上場しており時価総額がそんなに高くない会社である。なお、現在の東証一部の上場基準は時価総額では40億円以上なので、数は多くないが、時価総額が100億円に満たない会社は存在している。そういった会社は、失礼ながら一般的な知名度はほぼ無く(ヘタすると業界内でも知名度がない)、業績も給料パッとせず、社員が親戚に誇れることは「東証一部の会社に勤めている」ことくらいだったりするので、現在の東証一部と同格扱いとなる「プレミアム市場」に残れるかどうかは、割と切実な問題なのだ。

この時価総額基準については、東証再編のスタートが500億円で、その後250億円まで緩和され、今回100億円まで落ちてきた(流石にこれ以上落とすと、今の基準と変わらなくなるので「再編」にはならないだろう)。100億円にまで緩和されたことによって大半の現東証一部の会社は自動的にプレミアム市場に移り、それ以下の会社はスタンダードに転落することになる。

・・・のかと思いきや、今回の報告書案では救済的に「経過措置」が設けられていた。


「市場第一部上場企業は、上場・退出基準に関する新たな時価総額(流通時価総額)に関する基準を必ずしも満たしていないとしても、プライム市場の選択を希望する場合には、より高いガバナンスについてのコミットメントを行う限りにおいて、当分の間、プライム市場への上場・上場維持を基本的に認めることが適当と考えられる」

時価総額100億円にも満たない会社にそんなに気を使ってどうするんだと思うかもしれないが、東証にとっては上場会社の納める上場賦課金は大事な収入源なので、小さな声(東証一部に残してくれ)にも一応答えたことになるのだろう。

なお、ここでのポイントは2つある。

①「より高いガバナンスについてのコミットメントを行う限りにおいて」

より高いガバナンスとは一体何なのか一切書かれていないので、今後公表されるCGコード改訂と関係してくるのであろうが、高度なガバナンスの一例として有名な「英文で招集通知を作成する」とか、時価総額100億円もない会社が作ってどうするんだ、という気はしなくもない。


②「当分の間、プライム市場への上場・上場維持を基本的に認める」

当分の間、ということは、①の高度なガバナンスをコミットして、それでも一定期間内に時価総額100億円に到達できなかったらスタンダードに落ちる、という意味だと読んだ。実力はあるものの、ガバナンスがダメなので市場から評価されていない会社もないことはないだろうが、そんな会社はレアだと思うので、プレミアムは諦めて最初からスタンダードを選択する東証一部上場企業も出てくると予想する。加えて現在のTOPIX(東証一部全銘柄で構成)に該当する新インデックスは市場区分と切り離した運用が考えられているようなので、時価総額が低いのにプレミアム市場にこだわるメリットは殊更大きくないだろう。

なお、更なる詳しい骨子については、2020年2月に公表される予定で、上記の辺りも明らかになってくるのだろうが、個人的には市場に応じてガバナンスレベルを変えていくというのは大賛成。正直に言って社外取締役の人数が多いとか、英文の開示を充実させているとかによって企業の不祥事が減ったり、業績が改善するなどと、思うような気がしたりしない(明言は避ける)けれど、こういうのはスタッフを揃えたりコンサルを入れたりと単純にコストがかかるので、別に世界一を狙ったりせず、地元の雇用を優先しながら地銀とタッグを組んでぼちぼちやっているようなメーカーとかは、最低限の会社法が求めるガバナンスで良いと思う。

<参考>
市場構造の在り方等の検討(日本証券取引所HP)
https://www.jpx.co.jp/equities/improvements/market-structure/index.html

金融審議会「市場構造専門グループ」(第6回)議事次第(金融庁HP)
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/market-str/doc/1224/20191224.html

2020年1月31日金曜日

IFRS16号「リース」の内容と日本の現行のリース会計基準との差異

現在の日本リース会計では、リースはオペレーティングリースとファイナンスリースに分類され、ファイナンスリースの物件はリース資産として資産計上(オンバランス)する必要があるものの、オペレーティングリースは経費処理(オフバランス)することが認められている。

一方、国際会計基準(IFRS)においては、こうした分類は無く、リース取引は全てオンバランスすることとなるため、リース会計においてもIFRSが適用されることとなるとバランスシートが変わる可能性がある。

こうした将来を見越して、IFRS16号「リース」の内容と日本の現行のリース会計基準との差異を把握し、当該会計基準の内容及び導入時期等について調べた(セミナーに参加した)ので、その内容を簡単にまとめておく。


・IFRSにおけるリースの定義

現在のリースは、中途解約禁止(ノンキャンセラブル)かつ便宜と費用の殆どを借り主が負担する(フルペイアウト)であれば、ファイナンスリースであり、それに該当しないリース取引をオペレーティングリース取引としている。

一方、IFRSでは以下の通りリースの概念が定義されている。

「リースとは、資産(原資産)を使用する『権利』を一定期間にわたり対価と交換に『移転』する契約または契約の一部分」 
※『』はセミナーで強調された文字

また、上記概念に従って、以下の通りリースの判定を行わなければならない。

「『契約の開始時』に、企業は、当該契約がリース又はリースを含んだものであるかどうかの『判断』をしなければならない」 
※『』はセミナーで強調された文字

なお、上場企業の場合は、最終的に判断するのは会計監査人(監査法人)であるが、上記の定義から判断すると、以下の取引は実態によってはリース取引と見なされる可能性がある。
  •  不動産の賃貸借
  •  ネットワークサーバーの賃貸借
  •  特定のメーカーから賃借した金型
  •  レンタル取引の物件全般
これらが全てオンバランスすることとなると、バランスシートへの影響は小さくないと思われる。

・導入(適用)時期等

リースにかかるIFRS適用時期は、現時点で「未定」。また、導入が決定された後、移行措置として3年間ほどの猶予期間が設けられると見られている(過去の適用事例から)。不動産の賃貸借に関しては、リースに該当するかどうか契約書を精査した上で、解約・延長に関する評価や償却計算に時間を要することになるだろう。

~ まとめ終わり ~

2019年3月に日経新聞にて、「リース会計のIFRS適用により、約17兆円のオペレーティングリースが日本企業に資産計上される」と報道され、相当インパクトが大きいのだろうと思っていたが、オペレーティングリースだけではなく、現在は賃貸借やレンタル取引として処理している物件もリース扱いになる可能性があると判明し、改めてインパクトの大きな会計改正であると感じた。適用時期は未定であるものの、適用が決まれば即座に対応準備に取り掛からなければならないので、担当者は引き続きアンテナを高くして情報収集する必要があるだろう。

なお、リースは最初だけ理解するのが少し難しいので、僕のように会計に疎い初学者には、次の入門書「図解でわかるリースの実務 いちばん最初に読む本」をお勧めしたい。筆者である六角明雄氏は公認会計士ではなく中小企業診断士なので不安を感じるかもしれないが、他の入門書と比較しても、本書はどのリース取引に該当するかの判断チャートや、レンタルとリースの違いなども図表を用いて丁寧にかみ砕いて説明されているので、かなり分かりやすい上に、読み終えた後も実務の確認として使いやすい。ある程度理解している人にも復習としておすすめの一冊である。

図解でわかるリースの実務 いちばん最初に読む本
六角 明雄
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2020年1月30日木曜日

株主総会対策セミナーにはどれに出席すべきか

年明けから、株主総会担当者にとっては株主総会関係のセミナーの季節の始まりである。1月末から3月頃まで知識を仕入れて、4月から招集通知を作成、5月のGW辺りにピークが来て、それ以降は気力でこなして無事校了、6月はリハーサルとか想定問答の取りまとめをしていると、暇な個人株主から「お土産は出るんですか」という電話がたくさんかかってくるようになり、本番のカウントダウンが始まる・・・。

さて、今日紹介したいのは、その1月から3月にかけてたくさん実施される「株主総会セミナー」は、どれに参加すべきなのか、という非常にマニアックなネタである。僕はかつて、出れるセミナーは全部出ていた時期もあったが、たった一つの株主総会をテーマとしてセミナーにいくつも参加するのはかなり非効率だ。ここでは、そこそこベテランとなった僕が、株式事務担当者はどのセミナーに参加すれば効率が良いか、言い換えると、これは出ておいた方がいいよ、というセミナーをランキングで紹介しておきたい。

なお、前提として、招集通知の作成から当日の会場対応責任まで担当している主力メンバーを想定している。

プロネクサス or 宝印刷のセミナー(★★★★★)

株主総会の招集通知作成セミナーは数あれど、やはり餅は餅屋、招集通知の作成は、実際に専門として作成しているP社とT社の印刷屋の解説が一番分かりやすい。株主総会を巡るトピックスやトラブル事例も上手くまとめて紹介してくれる。クライアントであっても有料になることが多いが、とりあえず2月くらいに開催される招集通知作成セミナーには参加しておくか、参加できなくてもレジュメだけは貰っておくことを強くお勧めしたい。私はどちらの会社のセミナーもよく参加しているが、個人的にはP社の方が好き。

信託銀行(証券代行)のセミナー(★★★)

株主名簿管理人である信託銀行証券代行部主催の株主総会セミナーも悪くはないのだが、特に招集通知作成のレジュメが使いづらく、後々これを見ながらPC画面で作業をすることまで想定はしていない感じがする。但し例外は三菱UFJ信託のセミナーで、ここは最大手だけあって、かなり分かりやすく分析されており、資料も使いやすい。別冊商事法務の「事業報告記載事項の分析」の巻末資料にも抜粋版が掲載されているが、実務者のかゆい所に手が届くように工夫されている。参加できなるなら参加しておく価値あり。

株式懇談会(株懇)のセミナー(★★)

解説を担当する株懇委員にもよるが、株懇委員は解説(プレゼン)は専門ではないため(委員は上場会社の総務とか法務担当者)、はっきり言って解説は聞いていても分かりにくいし、レジュメの作りも微妙である。一応、株懇モデルを知るということでは有用かもしれないが。ただ、4月頃に開催される「6月末総会の日程表」の解説だけは出ておくべきだ。あのセミナーが実質的な株主総会準備のスタート日になっている実務担当者は多い。

弁護士事務所主催のセミナー(★★)

招集通知作成の内容がメインで開催されることは少ないが、現役バリバリの弁護士によるセミナーも開催される。要点を絞った解説は確かに分かりやすいが、このセミナーの内容だけで招集通知を作成したり、主要なテーマを網羅することはできないので、あくまで補足的に利用することとなる。やはり弁護士のセミナーは「法改正の解説」が一番だと思う。あと、いつも思うのだが、この手の人たちなぜ巻末に経歴を記載するのだろうか。東京大学法学部を卒業後(在学中に弁護士合格)、ハーバードロースクールを卒業・ニューヨーク州の弁護士資格を取得、法務省出向を経て、パートナー弁護士になり現在に至る、政府諮問委員会も務め、○×会社社外取締役、著書多数・・・こういう経歴の人がやたら多いのだが、たまには挫折だらけの経歴の弁護士の解説も聞いてみたいものである。

商事法務主催のセミナー(?)

お一人様参加費3万円(税抜)で有名なセミナー。残念ながら会社が貧乏な私は参加したことがないが、少人数制できっと分かりやすいのではないだろうか(講師は大抵の場合、株式実務の世界での超有名人)。誰か参加したことがある方は是非教えて下さい。


色々書いたが、僕の場合は、プロネクサスと三菱UFJ信託のセミナーには自分で足を運んで参加し、株懇と弁護士事務所のセミナーは(付合いもあるので)部下に参加させている。なお、これらの評価はあくまで僕という3流ダメサラリーマンによる偏見がかなり入っていますので、クレームとかマジでやめて下さい、お願いします。

2020年1月19日日曜日

薄着健康法?

最近、寒くなってきましたね。皆さんはどうやって通勤時の寒さをしのいでいますか。

かくいう僕は、寒いのが苦手で、インナーにはヒートテック2枚を重ね着、アウターはネットで奮発して購入したカシミヤ100%の温かさが売りのコートを着用しているのですが、それでもこの時期は寒くて、外の移動中はなるべく早足で歩くようにしています。



ただ、これだけ寒いにも関わらず、駅とかでたまに見かけるのが、アウターとかマフラーを一切着ずに、スーツのジャケットだけで平気そうな顔をしている人です。

肌感覚が狂っているのか、心頭滅却の精神を極めているのか、または、凄く高性能なインナーを着ているのか・・・。とても疑問だったのですが、最近知ったのが、「薄着健康法」という対処法です。

これは、簡単に言うと、寒いときにこそ薄着をすることで、体が体温を上げるために新陳代謝を活発化させて、より健康になる、といった健康法でした。代謝が上がるので、ダイエットにもなるそうです。きっと、真冬にコートを着ない人はこれをやっているんだと思います。実際に取り組んでブログで紹介している人もいるので、詳しくはググってみて下さい。

薄着健康法 - Google 検索

で、これを聞いて真っ先に僕が思い付いたのが、真冬にする、乾布摩擦ですね。狙いとする目的は、同じなのでしょうか。



乾布摩擦のイラスト



モノは試しと、今朝、コートを着ずに手に持って駅のホームに突っ立ってみたのですが、30秒くらいで限界が来て、風邪ひきそうな気がしたのでやめました。。まだまだ、精神の修行が足りないようです(修行するつもりもないですが)。