2020年5月24日日曜日

同一労働同一賃金への対応

今更ながら同一労働同一賃金について調べてみた。これは、正社員と非正社員での「不合理な待遇差」を禁じる改正法であり、大企業は2020年4月から、中小企業は2021年4月から適用される、つまり一部の企業ではすでに適用が始まっている。
よって、今更腰を上げている大企業の担当者は失格なのだが、とりあえず、覚えておきたい内容を、メモとしてここに残しておくこととする。

結論から言うと、企業として準備すべきことは以下の2点である。

  1. 正社員と非正社員(定年後の再雇用者や地域限定職社員含む)の待遇差を整理した表の作成
  2. その待遇差の「説明義務」の準備

以下、同一労働同一賃金の法改正のポイントを簡単に紹介する。


同一労働同一賃金の主な改正内容
  • 正社員と非正社員の不合理な待遇差を禁じる「均衡待遇」と「均等待遇」の規定が整備されたこと。
  • 雇用形態による待遇差の内容と理由について、「説明義務」が創設されたこと。

法改正の目的
同一労働同一賃金という言葉から、「非正社員が正社員と同一の労働をしているのであれば、正社員と同一の賃金を払わせること」が目的だと思えるが、そうではなく、後述の「均衡待遇」と「均等待遇」を強化することで、不合理な待遇差を無くすことを目的としている。つまり、賃金だけではなく、休暇、福利厚生施設、研修の機会等の格差も課題となる。なお、対象が正社員と非正社員の差の是正であるため、正社員同士の手当の差や、有期契約社員同士の差には対応不要。

「均衡待遇」とは
正社員と非正社員の待遇差について①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲、③その他の事情、を考慮して不合理な待遇差を禁止する制度。一切の待遇差が禁止されているわけではなく、それぞれの要素でバランスが取れているか否かが問題となる。

「均等待遇」とは
①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲、が正社員と非正社員で同一の場合、差別的取り扱いを禁止する制度。ただし、①②は雇用期間全体で判断するため、実務では「均衡待遇」程の重要性はない。

「説明義務」とは
短時間・有期雇用労働法では、待遇差の説明義務が新設され、企業は非正社員から待遇差の説明を求められれば、待遇差の説明を行う義務を負うこととなった。これに伴い、労基署は相談者が来た場合「短時間・有期労働法14条2項に基づいて企業から説明を受けてほしい」と最初に指導を行うようになっている。これは、会社として考えていることを説明すれば義務は果たされるが、今回の改正法施行に伴い、最も企業が注意しなければならないのが、この説明義務に違反すること。説明義務を果たさない場合、労働行政に指導を受けることや、企業名を公表される恐れがある。

非正社員の雇用上の留意点
正社員と非正社員の職務内容の違いを規程で明確に区分して、待遇差の「説明義務」の準備をしておくことが必要。非正社員の労働契約書や就業規則に職務内容が無限定となっていたり、出向や転籍に関する規定があれば、見直しを検討する。

定年社員の再雇用契約の留意点
定年に達した社員を再雇用する際、賃金は減額する会社が多いが、それが不合理な待遇差だとして揉めるケースがある。この定年再雇用に関しては最高裁の判例があり(長澤運輸事件:最高裁平成30年6月1日)、判決において、定年後の嘱託再雇用は長期間働くことが予定されておらず、老齢年金の支給等も見込まれ、正社員と賃金体系は異なるため、定年前後で仕事の内容が変わらなくても、給与や手当の一部(家族手当、住宅手当など)、賞与を嘱託社員に支給しないのは「不合理ではない」としている。ただし、皆勤者に支払われる精勤手当を嘱託社員に支給しないのは「不合理」とされていることから、皆勤手当のような手当が就業規則にある場合は契約書のひな型の見直しが必要。

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