2020年1月31日金曜日

IFRS16号「リース」の内容と日本の現行のリース会計基準との差異

現在の日本リース会計では、リースはオペレーティングリースとファイナンスリースに分類され、ファイナンスリースの物件はリース資産として資産計上(オンバランス)する必要があるものの、オペレーティングリースは経費処理(オフバランス)することが認められている。

一方、国際会計基準(IFRS)においては、こうした分類は無く、リース取引は全てオンバランスすることとなるため、リース会計においてもIFRSが適用されることとなるとバランスシートが変わる可能性がある。

こうした将来を見越して、IFRS16号「リース」の内容と日本の現行のリース会計基準との差異を把握し、当該会計基準の内容及び導入時期等について調べた(セミナーに参加した)ので、その内容を簡単にまとめておく。


・IFRSにおけるリースの定義

現在のリースは、中途解約禁止(ノンキャンセラブル)かつ便宜と費用の殆どを借り主が負担する(フルペイアウト)であれば、ファイナンスリースであり、それに該当しないリース取引をオペレーティングリース取引としている。

一方、IFRSでは以下の通りリースの概念が定義されている。

「リースとは、資産(原資産)を使用する『権利』を一定期間にわたり対価と交換に『移転』する契約または契約の一部分」 
※『』はセミナーで強調された文字

また、上記概念に従って、以下の通りリースの判定を行わなければならない。

「『契約の開始時』に、企業は、当該契約がリース又はリースを含んだものであるかどうかの『判断』をしなければならない」 
※『』はセミナーで強調された文字

なお、上場企業の場合は、最終的に判断するのは会計監査人(監査法人)であるが、上記の定義から判断すると、以下の取引は実態によってはリース取引と見なされる可能性がある。
  •  不動産の賃貸借
  •  ネットワークサーバーの賃貸借
  •  特定のメーカーから賃借した金型
  •  レンタル取引の物件全般
これらが全てオンバランスすることとなると、バランスシートへの影響は小さくないと思われる。

・導入(適用)時期等

リースにかかるIFRS適用時期は、現時点で「未定」。また、導入が決定された後、移行措置として3年間ほどの猶予期間が設けられると見られている(過去の適用事例から)。不動産の賃貸借に関しては、リースに該当するかどうか契約書を精査した上で、解約・延長に関する評価や償却計算に時間を要することになるだろう。

~ まとめ終わり ~

2019年3月に日経新聞にて、「リース会計のIFRS適用により、約17兆円のオペレーティングリースが日本企業に資産計上される」と報道され、相当インパクトが大きいのだろうと思っていたが、オペレーティングリースだけではなく、現在は賃貸借やレンタル取引として処理している物件もリース扱いになる可能性があると判明し、改めてインパクトの大きな会計改正であると感じた。適用時期は未定であるものの、適用が決まれば即座に対応準備に取り掛からなければならないので、担当者は引き続きアンテナを高くして情報収集する必要があるだろう。

なお、リースは最初だけ理解するのが少し難しいので、僕のように会計に疎い初学者には、次の入門書「図解でわかるリースの実務 いちばん最初に読む本」をお勧めしたい。筆者である六角明雄氏は公認会計士ではなく中小企業診断士なので不安を感じるかもしれないが、他の入門書と比較しても、本書はどのリース取引に該当するかの判断チャートや、レンタルとリースの違いなども図表を用いて丁寧にかみ砕いて説明されているので、かなり分かりやすい上に、読み終えた後も実務の確認として使いやすい。ある程度理解している人にも復習としておすすめの一冊である。

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