それは、債権者の保護について、である。
この頃の僕の仕事は後ろ向きの業務が多く、資本金を減少したり、将来性の見込めない子会社同士を合併させたり、リストラを・・・と色々やっているわけであるが、その際、ちょっとひっかかったことが、この「債権者の保護」だ。弁護士・司法書士の指示通りに官報公告+個別催告(又は電子公告等)を期日内にやっておけば、それで終わる手続きなのだが、減資とか組織再編において、なぜ債権者保護が必要とされるのか、その理由を考えた際、「何となく」「ふわっと」は分かるが、他人に説明できるくらいには理解していなかったので、今回ちょっと調べてみた。
以下は、それを調べた際のメモである。(※間違いがあったら、こっそりコメント欄で教えて下さい)
会社法上、債権者保護手続きが必要となるケースは2つ。
【ケース①】 資本金の減少等を行う場合
株式会社の財務の強さを示す指標の一つに「資本金」があり、その額がいくらであるかは債権者に重大な影響を及ぼす。「減資」を行い、その資本金が減少するということは、会社債権者に不利益を与えることになる。例えば、代表的な債権者は株式会社に「お金を貸した人」だが、その金を貸した前提条件となりうる「資本金」が減るということは、会社の担保能力の低下と言うことができ、債権者は異議を述べる機会が必要だということ。
【ケース②】 吸収分割等の組織変更を行う場合
吸収合併等が行われる場合、債権者から見れば、債務者である株式会社の資産内容が著しく変更することであるから、債権者に対して異議を述べる機会を提供しなければならない。これは、債権を保有している株式会社が吸収されて消滅する場合や分割される場合だけではなく、他の会社を吸収(合併)する場合も当てはまる。なぜなら、合併する会社が必ずしも良い会社とは限らず、例えば吸収対象となる会社が借金まみれの赤字会社であった場合、債権者としては債務者(株式会社)の返済能力の低下になるからだ。よって、債権者は異議を述べる機会が法的に設けられている。
ケース①も②も根本的な理屈は同じで、債権者が債権回収が可能だと見込んだ前提条件が崩れる恐れがある場合、異議を述べる機会、更に債権を弁済してもらう機会を会社法は設けているということ、と僕は理解した。(ちなみに、株主は株主総会で反対する機会が設けられています。)
なお、その公告というのは、細かい例外を除くと「官報公告」+「電子公告」でOKということになっている。「官報」なんて誰も読んでいないし、電子公告というのは自社のホームページに一定期間公告を掲載すること(誰も読みに来ない)なので、債権者保護と言いながら、実務的には債権者は気づくことなく承認したことにされてしまう手続だということができるだろう。
だからといって、大企業のように何十万社もの債権者が関係しているような場合は、個別にお知らせ(催告)することなど不可能であり、理想と現実は難しいのだな・・・と思った今日この頃であった。
※簡易組織再編や略式組織再編については面倒なので省略しました。
<お知らせ>
僕が唯一尊敬している弁護士である中村直人先生が、会社法を解説する新刊「会社法の実務」を発売しています。安い本ではないですが、個人的に法律の解説の分かりやすさではイチオシだと思っているので、書店で見かけたら読んでみて下さい。
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