2022年4月8日金曜日

関連会社の保有とその影響

とある会社との業務提携等を進めて株式の取得等を進めていく内に、その会社が「持分法適用会社になりそうだ」との連絡が経理部より入った。財務的な内容(財務諸表への影響)については、経理部が調べるとして、上場企業の法務担当者としては、財務分野以外で考えなければならない事項があるのか、あればそれは何なのか(そして、持分法適用会社とは何なのか…)を調べたので、ここでまとめておきたい。


1.法律上の会社の整理(ざっくり)

関連会社の保有とその影響


※関連会社以外の細かい内容(法務省令等)は省略しています。

・親会社 【会社法2条4号・会社法施行規則3条2項、3項】
株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるもの。

・完全子会社 【会社法施行規則218条の3】
「会社がその総株主の議決権の過半数(50%超)を有する株式会社その他の当該会社が経営を支配している法人として法務省令で定めるもの」が子会社の定義。完全子会社は、親会社がその会社の発行済株式の全部(100%)を有する状態。

・連結子会社
上記子会社の定義を満たし、かつ親会社の連結財務諸表の対象となる子会社のこと。

・非連結子会社
親会社が経営を支配している子会社であっても、当該企業グループ全体の経営や財務への影響度が低かったり、支配が一時的であったりする子会社。連結対象にはならない。

・関係会社 【財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則8条8項】
財務諸表提出会社の親会社、子会社及び関連会社並びに財務諸表提出会社が他の会社等の関連会社である場合における当該他の会社等。関連会社とは一文字違いなので注意。
また、同じような意味の言葉として「グループ会社」があるが、これは法的に定められた言葉ではないものの、関係会社と同じカテゴリーで使用されることが多い。

・持分法適用会社
会社法で定められた組織ではなく、企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」で定められた子会社及び関連会社の範囲のこと。

・関連会社 【財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則8条5項】
会社が子会社以外の他の会社等の財務および事業の方針の決定に対して、重要な影響を与えることができる場合における当該子会社以外の他の会社。

 

議決権

議決権以外の要件

20%以上

15%以上、20%未満

一定の要件※

15%未満

特定の者の議決権とあわせて20%以上かつ一定の要件※


※一定の要件
・他の会社の代表取締役、取締役またはこれらに準ずる役職に当社の役員等が就任していること
・他の会社等に対し、重要な融資、重要な技術の提供、重要な販売、仕入れその他の営業上又は事業上の取引があること、等


2.関連会社を保有した場合の影響


(1)内部統制関係
内部統制報告制度(金融商品取引法)において、全社的な内部統制の評価を中心として、関連会社への質問書の送付、聞き取りあるいは当該関連会社で作成している報告等の閲覧、当該関連会社に係る管理プロセスの確認等適切な方法により評価を行う必要がある。会社法上の内部統制システムには影響しない。


(2)株式実務関係
株主総会参考書類の社外取締役候補者の記載事項として、当該候補者が「特定関係事業者」であった場合にその内容記載が求められる。「特定関係事業者」には、現在及び過去に「関連会社」の役員であったことが含まれる。よって、社外役員候補者の過去の経歴を再度調べ直す必要がある。


3.その他法務的観点での留意点


財務諸表作成上、関連会社について財務情報の正確性の確保が求められる。一方、関連会社は保有議決権の割合において実質的な支配力を有していないため、関連会社が応じてくれない限り、適切な管理、調査ができない恐れがある。よって関連会社を保有する場面においては、次のような管理体制構築が求められる。

  1. 出資において適切なデューデリジェンスを実施し、経理・財務に係る社内体制の不備等がないか分析を実施する。
  2. 株主間契約等において財務情報の正確性を担保するための条項を取り決める。

 

実効的子会社管理のすべて

実効的子会社管理のすべて

0 件のコメント:

コメントを投稿