東京証券取引所によると東証再編に伴いプライム市場を選択したものの、上場基準を満たしておらず適合計画書を提出した会社が296社あり、そのうち、流通株式時価総額を満たしていない会社は217社あった。親会社や大株主の関係で流通株式比率が足りないような企業はテクニカルな施策でハードルを越えることは可能だが、時価総額だけはそうはいかない。適合計画書という絵に描いた餅を、その通り描き切ったとしても、時価総額は思うように増えない可能性もあるのだ。
この先どうなるのか、結構不安であろう217社の担当者に向けて、このまま流通時価総額が100億円に満たなかった場合、どうなっていくのかをまとめておきたい。
※時価総額に絞ってまとめているので、売買代金など判定時期が異なるものは東証の資料を読んで下さい。
東京証券取引所HPより |
・上場維持基準の判定タイミングと計画書の開示期限はどうなるのか。
判定のタイミングは、以下①~③の流れに沿って行われる。プライム上場に不適合とされた上場企業は2021年12月に「計画書」を開示しているが、流通株式時価総額が100億円を超えない限り、その後も毎年、決算期到来時に進捗状況を記したものを開示しなければならない。
①判定開始時期
上場区分の再編が実行される2022年4月4日以降、毎年、上場維持基準に適合しているか否かの判定が行われる。開始は、2022年4月決算企業から。
②算定方法
算定方法は、流通株式数に事業年度末日以前3か月間の、日々の最終価格の平均値乗じて算出。
③計画書の開示期限
上場維持基準に不適合の状況になってから3ヶ月以内に計画書の開示(進捗状況の開示)が求められる。
<例>
9月決算の会社の場合、7月、8月、9月の3か月間の時価総額の平均値を算出。流通株式時価総額が100億円を満たしていない場合は、12月末までに計画書の開示が必要。
・経過措置はいつまでなのか。
東証山崎裕己社長のインタビュー記事によると、「10年も20年も経過措置を続けることはあり得ず、3年後のCGコード改定時期には何らかの方向性を出すのではないか」とのこと。
※週刊エコノミスト 2022年2/15号【特集:東証再編 上がる株 下がる株】より
以下は推測だが、コロナ影響の継続、各企業の計画書における期間及び計画の進捗状況を踏まえて、経過措置期限の判断が下されると思われるが、3年で区切られる可能性は低いであろう。
・流通時価総額の基準の見直しは行われないのか
これも確定的ではないが、東証山崎裕己社長によると、「流通株式時価総額基準を『200億円以上』とするなど、ハードルを上げることはありうる」とのこと。
なお、これも推測になるが、時価総額の基準の見直しが行われる場合は、経過措置の結論が出てからになると思われる。
・経過措置に入っている間の上場維持基準(時価総額)はいくらか。
10億円以上と定められている。いくら経過措置中とはいえ、時価総額が10億円台になると上場廃止が見えてくるので注意が必要。
・流通時価総額とTOPIX見直しの関係、及び影響はあるのか。
流通時価総額が100億円未満だとプライム市場であってもTOPIXからは段階的に外れていくことになる。判定の考え方としては、①~③の通り。
①TOPIX見直しの判定は2021年7月、2022年10月、2023年10月の3回(1回目の判定で流通株式時価総額100億円以上と判定されていれば、2回目以降の判定はない)。
②2022年10月の判定でも流通株式時価総額100億円以上が基準。
③流通株式時価総額は上場維持基準と同様に「事業年度末日流通株式数」×「事業年度末日以前3か月間の平均株価」で算出される。よって、3月末決算の企業は2022年3月末で2022年1月~3月の最終株価の平均値で判定される。
・TOPIXから外れると株価にはどんな影響があるのか。
TOPIXと連動しているETF(上場投資信託)や投資信託があるので、TOPIX銘柄から外れると、そこから資金が引き上げられることとなる。株価にはネガティブなインパクトとなる。
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最初にも書いたが、いくら中期経営計画を予定通り遂行して業績達成を実現したとしても、株価はどう跳ねるかは分からず、時価総額を上げることができるのかどうか、というのは分からない。また、売上と利益を今の2倍にしたからといって株価が倍になるとも限らない。時価総額基準未達でプライムを選択した経営者は今後難しい舵取りを迫られることになるが、上場企業の株式に携わっている者としては、スタンダードに逃げず敢えてプライムに挑戦することを決めた217社全社が時価総額基準を達成することを期待したい。
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