社会保険の基本を勉強してきた。自分なりに今までよくわかっていなかったことをざっとまとめたので、メモとして残しておきたい。
※内容はすべて記載時点の法令等を根拠としています。最新の内容については、都度調べて下さい。
1.健康保険・厚生年金保険の保険料徴収の仕組み
①保険料の計算
・月の初日入社の人も、月末入社の人も同じ1か月として計算する(日割り計算はしない)
②保険料の徴収
・被保険者になった月から被保険者でなくなった月の「前月分」まで徴収する
・当月分の保険料は「翌月支払う給料」から徴収する
③資格取得月と喪失月の保険料
・保険料は取得月にかかるが、喪失月にはかからない(退職日の翌日が喪失日)
2.月末退職者の保険料にかかる留意点
・資格喪失日が退職日の「翌日」=月末退職者の資格喪失日は「翌月1日」
・保険料の徴収期間:資格喪失日の属する月の前月分まで
→退職日が1日異なるだけで、保険料の徴収期間が変わることに注意(通常は月末退職だが、イレギュラーとして月中の退職者が発生することもある)
<事例>
退職者 | 退職日 | 資格喪失日 | 保険料徴収期間 | 徴収方法 | 退職後の健保・年金 |
Aさん | 9/30 | 10/1 | 9月分まで | 9月給料から2か月分天引き (8月分、9月分) | 10/1加入 |
Bさん | 9/29 | 9/30 | 8月分まで | 9月給料から天引き(8月分) | 9/30加入 |
4.退職後の健康保険手続き
退職後の健康保険は4パターン(①再就職先で加入 ②任意継続被保険者 ③家族の被扶養者 ④国民健康保険 )に分かれる。 ※会社を退職=健康保険の被保険者資格を喪失
■ 再就職する場合・・・①再就職先の健康保険に強制加入
選択 | ②任意継続被保険 (健康保険組合) | ③家族の被扶養者 | ④国民健康保険 ※2 |
条件 | 勤務期間が2カ月以上 | 年収基準額 ※1 60歳未満:130万円未満 60歳以上:180万円未満 | 日本国内に住所のある人で、ほかの健康保険に加入していないこと |
被保険者になれる期間 | 最長2年間 | 被扶養者として認定されている期間 | 他の健康保険に加入していない期間 |
保険料 | 退職時の標準報酬月額の保険料(会社負担が無くなるため在職時の約2倍) | 不要 | 市区町村によって異なる |
医療費負担 | 共通:原則3割(70歳以上は原則2割) |
※1.健康保険は向こう1年間の収入見込みによって被扶養者となれるかどうかを判断する(年間収入で判断する所得税法上とは異なる)。そのため、退職した後の収入が基準額の範囲内であれば、被扶養者となれる。②家族の被扶養者となる場合は、先方の健康保険組合と相談してもらう。
※2.④国民健康保険には「扶養」という考え方はなく、加入者1人ひとりが被保険者となる。そのため、退職者に扶養者がいる場合は、①任意継続保険が有利。
5.退職後の厚生年金保険手続き
退職後の厚生年金保険は4パターンに分かれる。①再就職先で加入 ②国民年金に加入 ③配偶者の被扶養者 ④年金を受給(受給年齢に達している場合)
<4パターン>
①再就職先で加入 | ②国民年金に加入 |
再就職先の会社に年金手帳を提出して加入する。但し、離職期間が1か月以上生じる場合は、離職期間は国民年金保険に自分で加入する必要がある。
| 退職して厚生年金の被保険者でなくなると、20歳以上60歳未満の人は国民年金に加入する手続きが必要。60歳未満の被扶養配偶者も、国民年金第3号被保険者から第1号被保険者に変わるため、保険料を納めなければならない。手続きは、退職後14日以内に市区町村の国民年金担当窓口に行く。 (保険料:1人月額16,540円/令和2年) |
③配偶者の被扶養者 | ④年金を受給(受給年齢に達している場合) |
配偶者が第2被保険者の場合、配偶者の扶養に入ることで、第3号被保険者(自分で保険料を払わず配偶者が加入する年金制度が保険料を負担)になることが可能。
| 退職者が年金受給年齢に達している場合(老齢基礎年金は原則として65歳から支給)は、市区町村の国民年金担当窓口に年金手帳を提出して年金受給の開始となる。但し、退職者が失業手当を受給する場合は、失業手当が所得となり年金受給額が減額されるため、その場合は年金担当窓口で相談してもらう。 |
6.退職後の雇用保険(資格喪失)手続き
<手続きの流れ>
①「離職証明書」を会社が作成し、退職者に渡す。その内容を退職者が確認の上、記名、押印をして会社に返却してもらう。
②「雇用保険被保険者資格喪失届」を会社が作成し、①で記名押印済の「離職証明書」を会社からハローワークへ提出する。
③ハローワークから会社に「離職票-1」「離職票-2」が届く。
④会社から退職者に「離職票-1」「離職票-2」を郵送する。(「雇用保険被保険者証」を渡していない場合は、このタイミングで郵送する)
※1 特定受給資格者 | 離職理由が倒産や会社都合の解雇等、再就職の準備をする時間的な余裕がなく離職を余儀なくされた人 |
※2 特定理由離職者 | 期間の定めのある労働契約が更新されなかったこと、その他やむを得ない理由により離職した人 |