主な内容は「今年の株主総会で想定される質問と回答例」。もうほとんどの上場企業は想定問答のまとめの段階に入っていると思いますが、一応本書で執筆者の山田和彦弁護士が紹介していたテーマをざっと紹介します。
旬刊「商事法務」4月15日号(No.2098)
<今年の株主総会で想定される質問>
・取締役会の実効性
・議決権電子化のための環境整備
・招集通知の英訳化
この辺りはコーポレートガバナンス・コード(CGコード)ネタですね。特に取締役会の実効性の評価は、まだ第一生命とか数社しか開示していない状況なので、コンプライするより、エクスプレインの内容を引き続き考え中(作文中)の会社が多いと思いますが、とりあえずその作文案を想定問答にしておけば良いと思います。実務向けセミナーでは「評価方法の方向性くらいは決めておけ」とよく言われているので、株主から質問された際、「まだ0からの検討中です」というのは(それが本当であっても)避けましょう。
議決権電子化とか招集通知英訳化とか、やっていないところは何らかのエクスプレインをしていると思われるので、これもそのまま回答しましょう。しかし、議決権電子化しても、招集通知を英訳化しても、別に株価は上がらないんじゃないでしょうかね。
・独立社外取締役の複数名選任
・業績と連動する報酬の割合等の適切な設定
・指名・報酬等の検討における独立社外取締役の関与・助言
・取締役会の構成・多様性の確保
これらもやっていない会社はCG報告書でエクスプレインしていると思うので、それに従えば問題ないかと。業績連動報酬に関しては、今年の6月総会の上場会社の招集通知を読む限り、ストックオプションを導入している会社の数に驚かされます。CGコードの影響力の大きさを認識する瞬間でもありますが、ストックオプションが株式報酬型の場合は何等かの報酬との相殺になっているわけで、役員にとっては決しておいしい制度ではないと思うのですが、みなさんどう思っているんでしょう。特に、創業80年以上の老舗企業のストックオプションなんかもらっても、旨味は殆どないと思うのですが…。
それと、これとは直接関係ないのですが、割と大手と呼ばれる会社が参考書類に「取締役候補者とした理由」を書いていない事例を散見するんですけれど、これは役員の経歴(略歴)の記載をもってコンプライと考えているのでしょうかね。この辺りの考え方は、7月以降の実務セミナーの解説に期待したいと思います。ちなみに僕は「○○氏は・・・の分野において永年の経験と豊富な実績を有しており・・・」といった感じの金太郎飴のような選任理由を書いたら、ほぼそのまま役員会を通過したので、内心役員は誰でもいいのかなと思っています。
・会計監査人
・監査等委員会設置会社に移行しない会社
会計監査人に関しては、新日本有限責任監査法人を使っている会社で、かつ継続する会社は、監査役会が同意した理由を何か聞かれる可能性は高いです。ただ、さすがに監査役は何かしらの回答を考えていると思いますので、ここは監査役に任せましょう(これくらい仕事してもらわないと)。
監査等委員会設置会社への移行関係は、昨年の株主総会で案外聞かれなかった質問NO1なので、株主総会想定問答集のコピペを準備しておけば問題ないと思います。一般の株主さんは、そんなこと興味ないってことですよ。
・マイナス金利の影響
・消費増税
・マイナンバー制度
マイナス金利は、金融機関ならまだしも、一般的な事業会社は聞かれない質問だと思います。消費増税は最近になって再び延期が決定されたこともあるので、最終消費者をターゲットとしているBtoC企業は特に注意した方が良いでしょう。マイナンバー制対応も個人情報を扱う会社は要注意だと思います。
あと、個人的に毎年思うことは、個人株主からの質問は、9割は発送した「招集ご通知」の中から出て来るということです。穴が開くほど招集通知を読んで、想定問答が完成したら、後は株主総会当日に事務局に入る部門長クラスの人と、議長(社長)の手腕に全てを託しましょう。
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