・法的リスクとコンプライアンス
企業を取り巻くリスクは大きく分けて4つのリスクがあると言われている。経済リスク(市場)、カントリーリスク(政情)、法的リスク、天候・災害リスクがあるが、この中で、法的リスクは他のリスクと比べコントロールしやすい。コンプライアンスの実現は法的リスクの管理そのものといえる。
・企業経営環境の変化とコンプライアンス
日本は法治国家であるのに、なぜ最近になって急にコンプライアンスと騒がれるようになったのか。昔から公害事件やバブル期の金融など、企業の不祥事は結構行われていた。しかし、近年では企業の事業活動の根幹に関わる問題や、内部告発で発覚する不祥事が、いわゆる超一流企業や伝統のある老舗企業で起こるようになってきた。また、時価会計・連結決算制度の導入により、経営の透明性の向上が求められ、子会社を舞台とする不正もやりにくくなってきた。更に行政のスタンスにも変化があり、これまでの護送船団方式から自己責任へと変化し、事前チェックではなく事後チェックへと変わった。これら企業経営環境の変化が、コンプライアンスが議論される原因となった。
・コーポレート・ガバナンスと制度の変遷
経営者を如何に監視するかという視点で、まず「監査役制度」を導入したが、あまり意味がなかった(確かに、実際企業内から監査役を見ていてあまり意味がないように思う)。そこでアメリカから「委員会等設置会社」のシステムを輸入したが、これもあまり意味がなかった。そこで今回、「内部統制システム」が制定された。内部統制システム構築の目的は業務の適法性と効率性の実現であり、適法性というブレーキをかけつつ、如何に効率性を実現する経営を行うかが、最大の課題である。
・企業法務の役割の変化
クレームの対処等の事後的な臨床法務や、紛争予防としての予防法務がこれまでの法務部門の役割であったが、近年はM&A・グループ企業の再編・経営体制等、戦略法務としての役割が新たに注目を集めている。
・法務部門の役割
会社全体の中での法律相談の窓口となるのはもちろん、これからはコンプライアンスに関する社内教育の担い手としても重要となってくる。また社内教育は、コンプライアンスの知識以上に違法行為を行わないという意識の啓蒙が重要となっていく。
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