かつて己の醜悪な容姿から「モンスター」とまで呼ばれた女性が、整形手術をきっかけに、誰もが振り向くような絶世の美女へと変身し、かつての己を虐げてきた男性に(一部女性にも)復讐を行っていくというストーリー。主人公は整形手術の資金を工面するため、風俗で働き始める。その際知り合った一人の職場仲間(風俗嬢)が恋人に殺される場面が中盤にあるのだが、きっとこの主人公の女性も最後誰かに殺されて終わるのだろうな・・・と思って読んでいたら、殺されはしないものの死亡して終わった。そこは予想通りだった(笑)
さて、幼少の頃から醜悪な容姿で周りの人間から虐げられてきた主人公の女性は、整形に整形を重ねた顔と風俗で稼いだカネを用いて、初恋の相手であり、ずっと憧れていた男性(勉強のできるイケメン)を落とすことに成功するが、色々無理があったので、前述の通り死ぬ。その死ぬ直前、主人公の女性は初恋の男性に「本当の自分」を打ち明けて終わるのだが、これってハッピーエンドなのだろうか、と疑問に思った。結局、その初恋の相手も裏話を打ち明けられるまで、何を言われても整形する前の彼女(主人公)に気づくことはなく、ただ美容整形で造られた美人にのめり込んで狂ってしまっただけで、他の男性と一体何が違ったのか・・・そういう点で僕にはただただ救いようのない物語に読めた。
また、整形は失敗する可能性があり、非常にハイリスクな手術であるにもかかわらず、ここまである種の「整形シンデレラストーリー」がヒットしてしまうと、真似して整形に走る女性が増えるのではないかと不安になった。主人公のように、失敗しても失うものが全くないような女性であればいいが、大半の人は、失敗によって失うものも大きいと思う。よく紹介されている芸能人の整形失敗は見るに堪えないものが多い。当然、後遺症などもあるらしく、こうしたリスクと美貌を手に入れるメリットを天秤にかけて大半の女性は整形を諦めるのだろう。
それから、主人公の女性は整形する前は工場の単純作業労働者として低賃金かつ辛い職場環境で過ごしたわけだが、もし彼女が整形という選択肢を選ばなければ、またお金を稼ぐために風俗で働くという選択肢を選ばなければ(お金の工面ができず整形はストップする)、きっとそれはそれで悲惨な人生を送っていたのだろう。
整形したら病気(整形による後遺症)で早死、整形しなかったら辛く惨めな生活・・・筆者の百田氏は、要するにブスには不幸な人生しか待っていないとでも小説を通じて言いたかったのか。
文章とストーリーのテンポが良いので、一気に読めるものの、終盤は官能小説のようエロい表現(官能小説を読んだことないが)もあり、読み終えた後は若干後味の悪い作品だと思った。
ちなみにストーリーとは直接の関係はないが、小説の中で指摘されていた風俗嬢と整形についてのトレンドは面白いと思ったので紹介しておきたい。
まず、短期間で金を稼ぐために上京して風俗の世界に入るが、その前に顔を整形する。そして、その美形化された顔を持って東京の風俗で稼ぐ。ここまでは普通に思い付く範囲だが、そこから先に意外性があった。ある程度稼いだら、又は年齢的に風俗が厳しくなってきたら、再び整形して元の顔に戻してから田舎に帰るのだそうだ。
なるほどと思った。この方法であれば短期間で稼げる上に、リスクも低い。敢えていうなら、2回目の整形で元の顔に戻らない可能性があるくらいだが、長期間地元を離れているわけだから、多少顔面の造りが変わったとしても、何とでも誤魔化すことができるだろう。
この理屈であれば、風俗と言わず、AV女優も可能だ。というか、AV女優の顔ってどれも似たり寄ったり…いや、なんでもない。東京大学を卒業して一流企業に就職しても、大抵は年収500万円くらいだが、風俗関係ならいきなり1000万円も夢ではない。若い時期限定ではあるが、どうしても短期間でカネが欲しいというのであれば、さまざまなリスク覚悟でやってみるのも悪くないかもしれないと思った。
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