■インサイダー取引規制上の公開買付け等事実に係る公表措置拡大
これまで、上場会社が行う自社株式の公開買付け以外の公開買付け等は、TDnetによる適時開示が公表として認められず、「12時間ルール*」の適用対象とされていたが、金商法改正後、TDnetを通じて公開買付等が公表された場合は、インサイダー取引規制が即時に解除されることとなった。
また、非上場会社が公開買付け等を行う場合、①被買付者(上場会社)又は②公開買付者の親会社(上場会社)と連名でTDnetに公表することにより、インサイダー取引規制が即時に解除されることとなった。
*12時間ルール:代表取締役など、その会社の情報開示に関する責任を有する立場にある者が、所定の報道機関2社以上に対して、広く投資者全体に周知する意図をもって伝えてから12時間が経過した場合に、「重要事実」が「公表」されたこととなる制度。
■純粋持株会社等に係る重要事実の軽微基準の見直し
従来、インサイダー取引規制上の重要事実の軽微基準は、上場会社単体ベースと規定されていたが、上場会社が「純粋持株会社等」に該当する場合は連結ベースで判断されることとなった。この「純粋持株会社等」に該当する条件は、直近の有報ベースで、関係会社に対する売上高が単体の売上高の80%以上であることである。なお、純粋持株会社等に該当する場合は、有報の「事業の内容」欄に、その旨を記載する必要ある。
■TDnet利用上の注意
TDnetを通じて開示する情報には「適時開示情報」(開示義務がある又は投資判断に有用)と「PR情報等」(投資判断上の有用性が明確でない)があるが、今年の改訂で「他社との紛争又は見解の相違が生じている場合の見解の表明など、投資判断のため会社情報の周知という本来の趣旨を逸脱する情報の登録はできない」と追記が行われた。これは、今年の7月、楽天が三菱UFJモルガン・スタンレー証券の証券アナリストの書いた自社レポートに対する批判文を、TDnetを通じて開示した騒動を指している。
■上場制度整備懇談会
東証が主催する上場制度整備懇談会(座長:神田秀樹)は、新たな懇談会を開催し、主に以下の項目の検討が行われている。
①上場会社の資金調達
公募増資において既存株主への説明が充分に行われないまま大規模な希薄化を伴う増資(大規模な公募増資やライツ・オファリング)が行われているケースが散見されている。特に新株予約権を用いたライツ・オファリングでは、「ノンコミットメント型*」と呼ばれる手法で時価より相当低い大量の新株予約権が発行され、いわゆる不公正ファイナンスに利用されているという懸念がもたれている。
*コミットメント型:ライツ・オファリングで発行された未行使の新株予約権を、最終的に契約相手の証券会社が取得し、権利行使を予定すること。実施会社はあらかじめ調達する資金を確定させることができる。
ノンコミットメント型:コミットメント契約がなく、未行使のまま残った新株予約権は、最終的に失権・消滅する。実施会社は予定通りの資金を調達できないことがある。
②会社情報の開示等に関する事項
マスコミ等でスクープ報道が為された場合などに会社がどのようなコメントを開示することが望ましいか検討されている。これは、昨年の全日空の公募増資に関する開示問題を受けている。2012年7月3日、NHKが全日空の公募増資のニュースを昼に報道し、これに対して全日空は同日12時25分「現時点で決定した事実はない」とプレスリリース。にもかかわらず、同日16:00に公募増資の決定のプレスリリースを発表し、市場に混乱をもたらした。
■ウェブサイト上の情報管理について
今年3月、一部の上場企業のHPで、増資や決算情報といった公開前の重要情報が閲覧できる状態になっていたことが明らかになり、証券取引所ではこれを受けて「公表予定時刻より前の自社のウェブサイト等における会社情報の取扱い」という上場規則を6月29日に施行した。しかし、今でも事前に決算情報等にアクセスできる状態で開示してしまっている事例が発生しており、ウェブ担当者は開示手続に一層の配慮が求められている。
<参考>
・公開買付け等事実の公表措置(大和総研)
・純粋持株会社等におけるインサイダー軽微基準(大和総研)
・いまさら人には聞けない ライツ・オファリングのQ&A(大和総研)
・公開前の情報がネット流出、重大ミス防ぐ「5カ条」 (日本経済新聞電子版)
0 件のコメント:
コメントを投稿