MBOとは、会社の経営陣による会社の買収のことである。その中で、有名なシャルレのMBO事件について話を聞いてきたので、ここに書き留めておきたい。
平成20年9月、シャルレの創業家とモルガン・スタンレーが出資して設立した特別目的会社(SPC)により、シャルレの上場廃止を目指した公開買付(TOB)を実施したが、内部告発等があってMBOが失敗に終った事件である。さて、このMBOの問題はどこにあったのか。
事件の流れを追ってみると…
シャルレは平成20年の4月に5ヵ年の中期利益計画を作成しており、これを元に外部専門家(KPMG)に理論株価算定を依頼した。しかし、そこで弾き出された理論株価は創業家の想定していた価格より遥かに高かったため、
故意に中期計画の下方版を作成し始めた。その際、顧問弁護士事務所からは反対されたにもかかわらず、強行に下方計画を作成し、無理に安い理論株価を作り上げた。
その後、SPCは公開買付を実施(シャルレ取締役会はこのTOBに賛同)したが、ここで証券取引所にシャルレ側の内部告発が入る。シャルレ取締役会は賛同意見を撤回し、社長は辞任。MBOは失敗に終った。
安く買い叩くために、中期計画の下方版を作成している時点で取締役は株主に対する善管注意義務違反になるし、それも短期間に何度も下方版を作成しているため悪質性は高い。ポイントは最初の中期計画。ここで最初から低い業績予想版を作成しておけば、すんなりMBOは実行されていたのかもしれない。MBOは取締役にとって最高の利益相反取引だと言われるのも、こういう事件を見れば納得だ。
ちなみに、最初にKPMGが算定した株価は1200円前後。その後、SPCが中期計画に細工をした後に実施したTOB価格は800円。現在(平成21年6月)のシャルレの株価は300円前後。今のシャルレはお買い得だということか…(笑)