2012年4月12日木曜日

株主総会2012年関係のまとめ

久しぶりに株主総会に関するセミナーに行ってきた。仕事では必要ないものの、ポイントと思った部分もメモしたので、以下にまとめておく。

【総会の状況】
・総会の集中日(今年は6月28日)は年々低下してきており、今年は集中率40%を切るのではないかと言われている。

・株主総会の平均所要時間はほぼ定着した状態にあり、昨年は54分だった。但し、株主からの質問の数は増加してきている。

・出席株主数は増加傾向にあるが、総会後に開催していたコンサートを取りやめたエイベックス・グループHDでは9000人の減少、またお土産を廃止した野村HDでは出席者が半数になった例などがある。なお、お土産を出していない会社は20.9%で、最近になって増えてきている(前年比0.3%増)。

【事業報告に関して】
・有報と事業報告ではそれぞれ会社役員の報酬等に関する記載が求められているが、有報の方が個別開示や報酬の決定方針などで詳細な記載が求められている。事業報告の記載内容を有報に合わせる会社はまだ少数だが、会社数は増えてきている。

・「社外役員に関する事項」には証券取引所の定める「独立役員」に関する記載をする必要はないが、日経225銘柄会社の8割が注記にその旨を記載している。但し、書き方は各社各様で、特に統一された記載方法は見られない。

・社外役員の活動状況として取締役会・監査役会への出席率を記載するが、この点につき、議決権行使助言会社ISSは75%以上出席していない社外役員は再任しないという方針を打ち出している。

・昨年10月から各都道府県で施行された暴力団排除条例伴い、内部統制システムを変更する場合は「反社会的勢力排除に関する事項」の記載を変更する必要がある。

・「株式会社の支配に関する基本方針」に関しては、その「概要」を記載する必要がある(会社法施行規則118条)が、買収防衛策を導入している会社は、方針を短縮せずにそのまま記載する例が多い。なお、買収防衛策を既に導入している会社は、継続する会社が殆ど。昨今の株価低迷や景気の閉塞感から、国内において積極的なM&Aが行われることも予想され、むしろ防衛策を入れていない会社がどう敵対的TOB等に備えていくのか答える必要があると思われる。

・連結包括利益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書(会社法で作成は義務付けられていない)の記載をしている会社は日経225銘柄会社の中でも1割程度であり、また記載している場合でも「ご参考」といった文言が付されている例が多い。

【議案(参考書類)に関して】
・参考書類の役員選任議案につき、日経225銘柄会社の中では、候補者に読み仮名の表示がある会社は95%、新任候補者の表示がある会社は58.8%。

・役員報酬の支払に関しては、独立した議案「役員賞与支給の件」としてその都度決議している会社が25.5%。報酬枠を設定して処理している会社が59.3%。

・役員退職慰労金制度を廃止した会社は全体の60.5%で前年比2.7%増。廃止する企業は増加傾向にある。なお、株主総会白書(商事法務)によると、退職慰労金の代替措置として実施された施策の中で最も多いのは定例報酬の見直しで42.6%の会社が実施。役員退職慰労金の代替としてストック・オプションを導入する会社も多い。

【株主総会の招集及び運営に関して】
・株主総会の電子化に関しては、電磁的招集通知の発送は採用が低調(2.2%)であるが、電磁的議決権行使は堅調に増加している(25%)。なお、電磁的議決権行使を導入している企業の割合は資本金の大きさに比例する。

・WEB開示制度は昨年15.2%の会社が採用し、今年は更なる増加が見込まれている。なお、WEB開示を採用した場合、総会当日はWEB開示部分を「交付」か「備置」で対応をしている会社がほとんど。WEB開示の内容も含めた完全版の招集通知を配布した会社も13%あった。

・WEB修正に関しては修正のあった5割の会社が採用。総会当日に訂正文を配布している会社も2割ほどある。

・総会の運営には、運営のソフト化という点から女性の活用が進んでいる。総会における報告はビジュアル化が進んでいるものの、半分以上の会社は報告事項の全文を議長が読み上げている。

【臨時報告書について】
・臨時報告書(議決権行使結果)の提出時期は総会翌日37.0%、翌々日42.9%となっており、総会から2~3日以内には大半の会社が提出していることとなる。

・昨年は決議要件の記載で間違いがあったが(特別決議と普通決議の間違い)、間違えた場合は臨時報告書の訂正報告書を提出する必要があり、手続きが盆雑となるため、臨時報告書提出の際には注意を要する。

・賛成票の集計範囲は、当日出席の大株主を含む会社が多いが、その賛否の確認方法は包括委任状が最多の24.8%。また、役員株主を集計に加える場合は、議決権行使書の賛否欄で確認している会社が71.6%であった。

【ISSのガイドライン】
・議決権行使助言会社のISSはそのガイドラインを平成23年11月に変更しており、
①株主総会で過半数の賛成を得た株主提案(例えば取締役報酬個別開示を定める定款変更議案)を会社が無視した場合、経営トップである取締役の選任には反対推奨
②社外取締役(独立性は不問)がいない場合、その会社の経営トップである取締役の選任には反対推奨
などが追加された。

【独立役員制度の改正について】
・2月28日、東証から「証券市場の信頼回復のためのコーポレート・ガバナンスに関する上場制度の見直しについて(案)」が公表された。具体的には、独立役員について、その出身母体が取引先、相互就任関係、寄付先である場合、「独立役員届出書」における情報開示を拡充することや、内部統制システムについて(「決定」するだけではなく)適切な「構築・運用」を義務付けることなどが盛り込まれている。

・独立役員の出身母体が「取引先」に該当する会社が多いと思われるが、現在の独立役員に関する規定でも「主要な取引先」の出身者は開示内容が拡充されていること、また改定案の「出身者」とは現在を含む直近10年間において業務執行に携わった場合であることに留意したい。

・株主総会招集通知等における記載に関しては、「独立役員に関する情報を、株主総会における議決権行使に役立てやすい形で株主に提供するよう努める」と定められたが、これはあくまで努力規定であって強制適用ではない。但し、商事法務「総会白書」によると既に77%の上場会社が任意で、「役員に関する事項」に独立役員に関する記載をしている。

・前述の通り、 株主総会招集通知等に独立役員に関する事項を記載するかどうかは、各会社の任意であるが、社外役員の独立性を本年6 月定時株主総会の最大の注目点とする機関投資家や議決権行使助言機関も多いことから、内外機関投資家の持株比率の高い会社においては、積極的に記載することも考えられる。

・東証は、招集通知等による具体的な独立役員に関する情報の提供方法として次の方法を例示している。
①株主総会参考書類(選任議案)、事業報告に独立役員に関する情報を記載する。
②上記と同様の情報を記載した書類を別途作成し、株主総会招集通知(及び株主総会参考書類)の発送に際し同封する。

・証券取引所の定める「コーポレート・ガバナンス報告書」にも独立役員に関する事項があり、こちらは努力規定ではなく強制適用が行われる。

・本改定案の実施は今年の5月予定。

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