2025年6月27日金曜日

「上場企業クライシス」(週刊東洋経済)を読んだ

 久しぶりの投稿だが、大したことは書けないので、『週刊東洋経済』の「上場企業クライシス」(週刊東洋経済 2025年6/28号(上場企業クライシス))という特集を読んだ感想を書いてみる。



最も気になったのは、親子上場の記事で、たとえば、クロップス(スタンダード上場)とその子会社イノベーションホールディングス(プライム上場)という構図だ。ぱっと見て「ねじれている」と感じたのは、子会社のほうが上位市場に属しているという逆転現象だった。
だが、実際に数値を確認してみると、イノベーションHDの時価総額は約164億円で、クロップスの約104億円を上回っている。一方で、売上や営業利益などの事業規模では明らかにクロップスの方が上回っており、資本効率だけを見ればイノベーションHDが非常に優秀という構図だ。クロップスはイノベーションHDの株式を約57%保有し、取締役も送り込んでいるので、形式上は上場子会社であるものの、実質的には親会社が強い支配権を持っている。こうした構図の中で、今後問題が生じないのか気になった。

この文脈で改めて考えさせられたのが、MBO価格をめぐるアクティビストの主張だ。最近は、非上場化にあたってのTOB価格が「PBR1倍以下であるから安すぎる」として、価格の引き上げを要求するファンドもある。しかし、PBRというのはあくまで一つの指標に過ぎず、株価は将来の業績見通しなど、さまざまな要素を織り込んで形成されている。その企業が長期間PBR1倍を下回っているのであれば、それなりの理由があるはずで、それにもかかわらず、「純資産よりも株価が安いから割安だ」と断じてTOB価格を吊り上げようとする論調には、もやっとした。

一方で、グロース市場の現状も興味深かった。特集によれば、グロース市場に上場した企業のうち、初値(最高値ではなくて初値)から8割以上株価が下落している企業が100社以上あるという。多くが聞いたこともないような企業で、「上場ゴール」という言葉がまさに当てはまる感じがした。そして、そうした“ゴール上場”の企業が向かう先として、脚光を浴びているのが名古屋証券取引所(名証)だという。市場改革の影響で東証からの上場維持が難しくなった企業が、上場廃止を避けるために名証へと移行する──株主にとっては売買機会を担保するという意味で保護になるのかもしれないが、それは延命でしかなく、名証が“グロース市場の成れの果て”の受け皿になるのでは、という予感がした。


やはり、日々値段が変動する上場企業を巡る話は、見ていて面白いね。法律や制度の隙間をどう使うか、どう生き抜くか。それぞれのプレイヤーの動きに今後も注目したい。