1.男子シングルス
今年のバドミントンで一番話題を集めたのは違法賭博問題で謹慎処分を受けていた桃田賢斗(NTT東日本)の復帰で、当然ながらこの全日本総合選手権でもマスコミ一番の注目を集めた。その注目度は、通常は準決勝レベルの試合からTV放送されるバドミントンの全日本総合が、彼の場合は初戦から記者会見が開かれる程。緊張があったのか、それとも対戦相手が強かったのか、1回戦から苦しい展開が続き、準々決勝で武下利一(トナミ運輸)に1セットも取ることなしに敗退。試合後のほっとした表情から、如何に彼が強烈なプレッシャーの中でプレイしていたのかが、容易に想像できた。とは言え、やはり今後の日本のエースは彼以外に考えられず、こうした逆境を跳ね除けて優勝して欲しかったのというのが、僕の本音だ。ちなみに、優勝したのは、準々決勝で桃田賢斗を下したこの武下利一。準決勝で昨年準優勝の坂井一将(日本ユニシス)を倒し、決勝では昨年覇者の西本拳太(トナミ運輸)を下して優勝。
実業団リーグ戦で度々大物を倒していた彼の実力に疑う余地はないが、28歳の初ファイナリストが優勝というのは、バドミントン男子の若手選手が育っていないことの表れではないだろうか。
個人的に気になっていた若手は何名かいたけれど、金子真大(ふだば未来学園高校)=1回戦敗退、渡邉航貴(日本ユニシス)=1回戦敗退、三橋達也(日本大学)=1回戦敗退、古賀穂(早稲田大学)=2回戦敗退、大林拓真(埼玉栄高校)=1回戦敗退、と全然ダメで、一番の注目株である奈良岡功大(浪岡高校)も2回戦で五十嵐優(中央大学)に2-0で敗れた。若手が育っていそうで、全然育っていないのが日本の男子シングルスであり、今後の大きな課題を残した全日本総合に感じた。
2.男子ダブルス
今年、国際大会で飛躍した園田・嘉村(トナミ運輸)、井上・金子(日本ユニシス)、保木・小林(トナミ運輸)の3ペアに加えて、実力がありながら国際大会ではイマイチ結果を残せなかった遠藤・渡辺(日本ユニシス)が上位に食い込んでくるだろうと予想していたら、その通り、この4ペアが順当にベスト4に残った。この番狂わせ全くなしの中で優勝したのは昨年の全日本総合準優勝の遠藤・渡辺ペア。この4ペアは勝ったり負けたりなので、どのペアが優勝してもおかしくはないと思っていたが、その中でも遠藤・渡辺に勢いがあったということだろう。ちなみに僕の予想は、園田・嘉村と井上・金子が決勝で当たると思っていたが全然当たらなかった。
3.女子シングルス
男子シングルスとは違い、国際大会でも上位入賞が当たり前となっている実力者ぞろいの女子シングルス。第一シードの奥原希望(日本ユニシス)が1回戦で棄権したので、一気に山口茜(再春館製薬所)が優勝候補に躍り出た。昨年王者の佐藤冴香(ヨネックス)や大堀彩(トナミ運輸)も優勝の可能性があり、更に三谷美菜津(NTT東日本)、川上紗恵奈(北都銀行)、仁平菜月(トナミ運輸)といった実力者がどう絡んでいくのか、というトーナメントとなった。まず、山口茜であるが、準々決勝で今年のランキングサーキット優勝者の仁平菜月を下すと、昨年の全日本総合決勝で敗れた佐藤冴香を準決勝で難無く撃破し順当に勝ち上がった。一方、奥原希望が抜けたゾーンでは、大堀彩が昨年の全日本総合で惜敗した三谷美菜津に勝ち切ると、準決勝は峰歩美(再春館製薬所)から無難に勝利し、同世代ライバルであるバドミントンの天才・山口茜と決勝でガチンコ勝負となった。
決勝戦の名に恥じぬ一進一退の攻防で、ファイナルセットの最後の最後でひっくり返した山口茜が逃げ切って優勝したが、ゲームを通して終始「勝ちたい」という気迫を前身で表していたのは大堀彩だった。
あくまで自分の感覚だが、最近のバドミントン選手は試合で「自分のプレーがしたい」とか「楽しみたい」とか、そういうヌルいコメントをする人が増えているような気がしている中、この大堀彩のプレーは一言で表すなら「死んでも勝ちたい」であり、勝利を渇望する選手のプレーを見ると、応援したい気持ちになる。やはり勝負事はこうでなければね。
惜しくも準優勝で終わってしまった大堀彩だが、2017年は彼女の大躍進の年になった。この勢いで2018年は国際大会で活躍してもらいたい。
飛躍の一年となった大堀彩選手
4.女子ダブルス
女子シングルス同様、国際大会で上位入賞するペアがゴロゴロいるのが、今の日本女子ダブルス。そして、今大会の結果で最も世間の注目を集めたのも女子ダブルスだっただろう。リオ五輪金メダルの髙橋・松友(日本ユニシス)が第一シードの優勝筆頭候補ではあったが、最近調子が上がっておらず、逆に世界大会で結果を残して勢いのある福島・廣田(再春館製薬所)や米元・田中(北都銀行)に負けるのではないかなと予想していたら、やはり勝てなかった。むしろ、不調続く中で、タカマツペアが決勝まで勝ち上がってきたことの方が評価されるのかもしれない。
優勝したのは、今年の世界選手権で準優勝した福島・廣田ペア。準決勝で今年のインドオープン優勝ペア米元・田中を下し、決勝ではタカマツから1セットも取られることなく完勝した。特に福島由紀選手といえば、青森山田高校時代から有望視されてきた選手で、いよいよスポットライトを浴びてきたか、という感じがしている。
タカマツを破った福島由紀選手
来年もこの3ペアを中心に女子ダブルスは展開していくのだろうが、バドミントン女子ダブルスといえば世間的に金メダルが連想される種目であり、どのペアが国内トップに立とうと、それ相応のプレッシャーを感じながらプレーすることに変わりはないだろう。
5.混合ダブルス
混合ダブルスは詳しくないので、あまり書けないが、元日本ユニシスの山田和司が再春館製薬所で出場していたのがちょっと面白かった。それと、栗原文音のペアが金子祐樹(日本ユニシス)だったのが、気になった。数野選手は、怪我でもしたのか。それとも、引退・・・?
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最近ではバドミントンも人気が出てきたのか、桃田賢斗がマスコミの恰好ネタとして注目されているからなのかは分からないが、テレビで全日本総合選手権がたくさん見れるようになって、バドミントンファンにとっては良い時代になったのではないかと思った。
既に始まっているバドミントンS/Jリーグ2017は、今回の全日本総合の結果から鑑みるに、男子はトナミ運輸と日本ユニシスが五分五分、女子は再春館製薬所が頭一個抜けているが、奥原希望の復帰次第では日本ユニシスの優勝もあり得るだろう。男女ともに完全な2強状態(事実、日本代表のA代表・B代表は、ほぼこの3チームの選手)で、あまり面白くはないのだが、何かで番狂わせがあることを期待したい。
追記
12月12日、全日本総合を経て2018年の日本代表メンバーが選出された。1番のニュースは、やはり桃田賢斗のA代表復帰だが、個人的には、日本ユニシスの上田拓馬の名前が入っていなかったことが印象的だった。世代交代の波を感じる。
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